都市化で起こる「気温の異変」とは?
都市化は私たちが暮らす環境に多大なる変化をもたらしています。
よく知られているものの一つが「ヒートアイランド現象」でしょう。
これは都市部の気温が周辺の地域よりも高くなる現象を指します。
気温の分布図を描いてみると、高温域が都市部を中心に「島」のような形に分布することから「ヒートアイランド」と呼ばれるようになりました。
都会が暑くなる要因はアスファルトやコンクリートで街を覆っていることにあります。
農村部に広がる草地や森林、土壌、水田などは水を保持する力(保水力)が高いので、常に水分を蒸発させながら熱を消費しています。
そのおかげで、地表面から大気へ与えられる熱が少なくなり、気温の上昇が抑えられるのです。
対照的に、都会のアスファルトやコンクリートは保水力がない上に熱しやすいので、夏場の日中などは表面温度が50〜60℃にも達します。
加えて、熱を溜め込む性質があるため、日中に蓄えた熱を夜間に大気へ放出し、夜になっても気温が下がりにくくなっているのです。
それから高層ビル群の乱立も大きな問題となっています。
高い建物が高密度で密集していると、天空率(空が見える範囲)が狭くなり、天井で塞がれているような状態になるため、地表面からの熱の放射冷却の力が弱まり、熱がこもりやすくなります。
さらに高層ビル群のせいで風の通りが悪くなるので、地表面に風が届きにくいのです。
また人的活動に伴う大量の自動車やエアコンなどの排熱もヒートアイランド化に繋がっています。
都市化で「ウェットアイランド現象」も起こる?
このように都市化が気温の上昇をもたらすことは十分に知られていましたが、降雨量にどのような影響を与えているかは詳しく解明されていません。
そこで研究チームは都市化が降雨量に与える影響を地球規模で調べてみることにしました。
チームは今回、衛星で集められた降雨量データセットを利用し、2001年から2020年までの世界の1056都市における降雨量を調べ、周辺の農村部と比較することに。
その結果、研究者らも驚いたことに、調査対象となった都市の60%以上が周辺の農村部よりも平均的な降雨量が多くなっていることが判明したのです。
特に気候が高温多湿の都市であるほど、この傾向は強くなっていました。
周辺の農村部に比べて特に降雨量が著しく多くなっていた都市のリストには、テキサス州ヒューストンやフロリダ州のマイアミ都市圏、それからベトナム南部の都市ホーチミン、マレーシアの首都クアラルンプール、ナイジェリアの港湾都市ラゴスなどが挙げられています。
(ちなみに、周辺の農村部よりも平均降雨量が少なかった都市には、ワシントン州のシアトル、日本の京都・大阪・神戸、インドネシアのジャカルタなどがありました)
研究者らも言及しているように、これはまさにヒートアイランド現象ならぬ、「ウェットアイランド現象(wet island effect)」と呼べるものでした。
では、どうして都市部は農村部に比べて、雨が降りやすくなっていたのでしょうか?