私生活での仕事対応は「燃え尽き症候群」につながる?
本調査はアメリカ在住で様々な職種についている315名の正規雇用の従業員を対象としました。
オンラインで実施したアンケート調査で、勤務時間外の仕事対応の頻度や日常的なストレスレベル、および心身の健康状態について回答してもらっています。
その結果、勤務時間外にメールを返信するなどの仕事対応をする頻度が多かった参加者ほど、日常的なストレスレベルが高く、雇用主に対する悪口やネガティブな印象が強まっていることが判明しました。
さらに重要な発見は、勤務時間外の仕事対応が多かった人ほど、「燃え尽き症候群」の発症リスクが有意に高まっていたことです。
燃え尽き症候群とは、主に仕事上の対人コミュニケーションにおいて過度なストレス刺激を受け続けた結果、心理的に消耗して急にやる気や熱意を失ってしまう状態を指します。
特に燃え尽き症候群になりやすい人は、
・責任感が強くて仕事熱心
・まじめで頑張りすぎ
・過度に完璧主義
といった特徴を持っていることが多く、これに加えて、理不尽な要求を押し付けてくる職場や、努力に見合った報酬を与えてくれない職場、さらには周囲に相談できる相手がいない環境が合わさると、燃え尽き症候群の発症リスクが非常に高くなります。
またここでの調査は「勤務時間外の仕事対応」も発症リスクの上昇に寄与する要因となることを示すものです。
プライベート時間に来た仕事上のメールに返信してしまうのも、真面目で責任感が強い性格特性が関与しているのでしょう。
同様の結果は豪ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)による2023年の研究でも報告されています(RMIT, 2023)。
ここではアメリカ在住の896名のフルタイムワーカーを対象とし、先と同様の調査を行いました。
その結果、勤務時間外に仕事上のメールに応対することが多かった人ほど、慢性的なストレスレベルが高く、うつ症状や緊張性頭痛、不眠症、疲労感、集中力や判断力の低下が起きやすくなっていることが示されたのです。
以上の研究は、プライベートの時間に仕事の対応をすることがいかに健康への害悪となりやすいかを明らかにしています。
また勤務時間外の仕事対応で心身が疲労することは、その本人の生活の質を下げるだけではなく、会社全体の生産性の低下にもつながることを指し示すものです。
現代のテクノロジー社会では、プライベート時間に仕事の連絡を受ける機会が間違いなく増えています。
従業員の健康と会社の利益を守るためにも、私生活と仕事の境界線を明確に分けることは重要なようです。
気軽にいつでも連絡を取れるような時代になったからこそ、会社は「退勤した社員に仕事のメールをしない」などのルール作りをきちんと行っていくことが大切になるでしょう。