1分間のテクノロジー休憩が集中力と生産性を高めていた
スマホ(論文内では携帯電話と記載していますが、本記事ではスマホと置き換えて記載しています)やコンピューターなどのテクノロジーは学生と教授の交流や授業に関する質問を促すなど、学生の能動的な授業参加と学習をサポートする役割を果たしています。
その反面、学生がこれらの電子機器を使って授業中に勉強以外のことに取り組み、学業に悪影響が及ぶ可能性もあり、大学はジレンマに陥っています。
そこで研究者らは、学生が授業中に定期的にスマホを使用するための休憩であるテクノロジー休憩を与え、授業中のスマホ使用頻度と小テストの成績への影響を検証しました。
実験は大学の1学期間にわたって行われ、平均21人の学生が出席する授業22回分のデータが収集されました。
実験では、11回の授業で1分間、2分間または4分間のテクノロジー休憩を与え、学生には、休憩中のスマホ使用により授業への集中力を高める目的があること説明し、休憩中のスマホ使用を促しました。
また、比較検証のため、休憩中に質問のみを許可する質問休憩を同じく11回の授業で1分間、2分間または4分間与え、休憩中はスマホの使用を禁止しました。
いずれの休憩も授業開始から15分後に与えられ、また、学生には、仮に授業中にスマホを使用したとしても罰則は与えられないというルールが説明されました。
結果、1分間当たりのスマホの平均使用率はテクノロジー休憩で0.35回、質問休憩で0.53回となり、休憩時間の長さに関わらず、テクノロジー休憩の方が質問休憩に比べてスマホ使用頻度が低いとわかりました。
また、研究者らはテクノロジー休憩が長くなるほどスマホの使用頻度は減ると予想していましたが、結果は異なり、1分間のテクノロジー休憩で最もスマホ使用頻度が低くなり、テクノロジー休憩は短いほど効果的であると判明しました。
その理由は完全には解明されていませんが、1分間あれば少数のメッセージを読んで返信するのに十分という可能性があり、逆に、より多くのメッセージを送信する時間があると、それに対する返信が授業中に届き、再度返信する可能性が高まると考えられると著者は述べています。
さらに、小テストの平均の成績は、1分間のテクノロジー休憩を与えた場合に80%と最も高くなりました。
これは、1分間のテクノロジー休憩により、授業中に学生の気が散ることが減り、成績が向上することを示唆しています。
今回の実験では、スマホ以外のスマートウォッチやパソコンの使用に関するデータを収集していないことやスマホの使用目的が学業に関するものかを区別していないなど議論の余地は残っていますが、興味深い結果となりました。
集中力と生産性を上げる方法として、25分の作業と2〜5分程度の短い休憩を繰り返すポモドーロ・テクニック(Pomodoro Technique)があり、小休憩が重要であることは既に知られています。
テクノロジー休憩に関しても、今後研究が進めば学業に限らず仕事でも応用できるかもしれません。