耳が聞こえない蚊のオスは交尾をしない
今回、モンテル氏ら研究チームは、蚊の聴覚が彼らの交尾に影響を及ぼすと考えました。
そこで彼らは、ネッタイシマカの聴覚を失わせるため、聴覚と関連している遺伝子trpVaをノックアウト(遺伝子の機能を人工的に失わせること)しました。
このように遺伝子編集された蚊は、音に対して全く反応を示さず、聴覚と関連するニューロンでは電気活動も検出されませんでした。
研究チームは、遺伝子編集により、ネッタイシマカの耳を聞こえなくすることに成功したのです。
次に彼らは、耳の聞こえなくなった蚊を遺伝子編集していない蚊の集団の中に入れてどうなるか観察しました。
その結果、耳の聞こえないメスの蚊は、通常よりも苦労したものの、パートナーを見つけ交尾を成功させました。
このことは、メスが交尾相手を探すのに聴覚だけに頼っていないことを示しています。

一方、耳の聞こえないオスは、メスたちに全く反応を示さず、遺伝子編集されていないオスが数分の間に何度も交尾するのをただ見ていました。
モンテル氏も、「メスの羽音が聞こえないと、オスは興味を示さなかった」とコメントしています。
またオスの蚊の聴覚は、パートナーを探すだけでなく、彼らの欲望をかき立てるのに役立つようです。
研究チームがそれぞれのオスに、メスの羽音を聞かせたところ、遺伝子編集されていないオスは腹部を突き出して反応を示したにもかかわらず、耳の聞こえないオスはピクリとも動かしませんでした。
ほとんどの生物では、交尾行動が複数の感覚刺激の組み合わせで成り立っているため、モンテル氏は、オスの蚊について、「感覚を1つ奪うだけで交尾行動が完全に無くなるというのは興味深いことだ」と述べています。
ちなみに、今回の研究では、オスとメスで差が生じる理由は詳しく分かっておらず、この点は今後の研究で調査される予定です。
そして今回の成果によって、蚊対策の新たな道が開く可能性があります。