体は空気から直接ビタミンとミネラルを吸収できる:隠れた栄養源「空気」の検証
体は空気から直接ビタミンとミネラルを吸収できる:隠れた栄養源「空気」の検証 / Credit:clip studio . 川勝康弘
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体は空気から直接ビタミンとミネラルを吸収できる:隠れた栄養源「空気」の検証

2024.11.22 Friday

新鮮な空気は本当に薬になるのかもしれません。

オーストラリアのニューカッスル大学(UON)で行われた研究により、人間は空気からビタミンA、ビタミンB12などのビタミンや、マンガンやヨウ素などのミネラルを直接吸収し、食事で足りない量を補えることが示されました。

また一部のミネラルにおいては、呼吸だけでも必要量を超える量が摂取できることが立証されています。

さらに研究は、呼吸には空気中に存在する有用な微生物を補給するという役割もあり、常在菌の維持に欠かせないことも示されています。

一方で、人工的な空気循環システムがある閉鎖環境、たとえば都市部の高層ビルや宇宙ステーションのような場所では、この「空気由来の栄養素」や微生物が十分に得られないことが懸念されています。

研究者たちは空気中の栄養素を「気体栄養素」と呼び、口から摂取される「胃腸栄養素」を補う重要な役割を果たしていると述べています。

もし、空気が栄養素や健康に欠かせない微生物を運ぶ役割を果たしているとすれば、私たちは食事やサプリメントだけでは補えない、もう一つの「隠れた栄養源」に気付いたことになります。

古い言い伝えでは「仙人は霞を食べて生きている」と言われていますが、呼吸から摂取できる栄養素の豊富さを考えると、完全な眉唾には思えなくなってきます。

しかし呼吸器官は消化器官のような栄養吸収に特化していないにもかかわらず、なぜ多様なビタミンやミネラルを補給できるのでしょうか?

最新の研究内容の詳細は『Advances in Nutrition』にて公開されています。

A Breath of Fresh Air: Perspectives on Inhaled Nutrients and Bacteria to Improve Human Health https://doi.org/10.1016/j.advnut.2024.100333

呼吸は食事と違って一生止まらない

呼吸は食事と違って一生止まらない
呼吸は食事と違って一生止まらない / Credit:clip studio . 川勝康弘

「人間は空気から栄養を吸収できる」なんて話を聞くと、多くの人が疑いを持つでしょう。

私たちは長い間、栄養はすべて食事から得るものだと考えてきましたし、健康を維持するためには「バランスの良い食事」が欠かせないと信じられてきました。

また空気についての研究の多くは、有害物質や汚染物に焦点を当ててきたため、「空気から栄養を得る」というアイデアそのものが、健康に関する議論から遠ざかっていました。

何千年もの間、さまざまな文明において「新鮮な空気」が健康に良いと言われ続けてきましたが、現在では気分転換や精神的健康を得るための手段としてのイメージが定着しており、空気から何らかの栄養学的あるいは薬学的な恩恵を得る手段とは見なされなくなっています。

しかし呼吸の持続性を考えれば、話しは違って見えてくるでしょう。

呼吸は食事と違い、生きている限り一瞬たりとも止めることができません。

私たちは1日におよそ9000リットルもの空気を吸い込んでおり、一生を通じてその量は約4億3800万リットルにも及びます。

食事のように1日3回のイベントではなく、呼吸は24時間365日続く活動なのです。

この絶え間ないプロセスが、空気中の微量な栄養素を少しずつ体内に取り込むことを可能にしています。

たとえ空気中の栄養素の濃度が極めて低くても、膨大な量の空気を吸い込むことで、最終的に体内に蓄積される量は無視できないレベルになるのです。

そこで今回、ニューカッスル大学の研究者たちは、過去に行われた研究結果を参考に、人間が空気からどのように、そしてどんな種類の栄養素を得ているかを調べることにしました。

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