イギリスで「週休3日制」を実施した結果…
イギリスは2022年6月〜12月にかけて、60社以上、3300人以上の従業員を対象に「週休3日制」を導入する大規模試験を行いました。
ここで実施されたのは「100:80:100」モデルに基づく週休3日制です。
これはどういうことかと言うと、従業員が生産性をこれまで通り100%維持することを約束する代わりに、以前の80%の総勤務時間に対して100%の給料を支払うという制度を指します。
要するに、1日の勤務時間は変えずに、そのまま休みを1日増やすが、全体の給料は変えないというものです。
ですから「1日の勤務時間を8時間から10時間にして、休みを3日する」というような今回の東京都の方針とは違います。
イギリスで実施されたものは経営者にとってはかなりリスキーですが、試験の結果はどうなったのでしょうか?
これが驚くことに、試験に参加した従業員のほとんどは生産性を週5日の場合と同レベルに維持できており、休暇の増加によって日々の幸福度も改善されたと報告したのです。
さらに従業員の病欠は65%も減少し、71%が燃え尽き症候群のレベルが低下していました。
週休3日にしたことで従業員のストレスが大幅に緩和し、仕事への意欲も高まり、総勤務時間は以前と比べて減っても、従来と同じかそれ以上の働きを短い時間で行えるようになったのです。
実際連休を取るために仕事を事前にまとめて終わらせた経験を持つ人は多いでしょう。勤務日数の減少や休日の増加は同じ時間で行う作業の効率も変化させるようです。
やはり週休3日にする場合は、1日の勤務時間を増やして総勤務時間は変えないよりも、大胆に丸ごと1日休みを追加する方針にしてしまった方がいいのかもしれません。
このため試験に参加した企業の90%以上が週休3日制の導入の継続を選択し、うち18社は恒久的に週休3日制にするとの決定を下しています。
ただ、都庁では休日にした分の勤務時間を残りの4日間に割り振るという方法を選択しているように、単純に休みを増やして生産性は維持し、給与も変えないという仕組みは導入しづらいことが伺えます。
生産性の維持をどうやって評価するかは業種によってはかなり難しいため、結局は週休3日制の導入では、1日の作業量の増加や、給与の減額という形で実現されることになるでしょう。
ただ、通勤にかなり手間がかかる人や、午前は仕事の立ち上がりが遅いという人は多いため、業務日数を減らしてその分の作業を残りの4日間に振り直すことは、想像以上に作業効率への恩恵が大きいと考えられます。
マラソンでも10km走る場合と、8km走る場合では体力の配分が変わるように、週4日勤務の方が作業を効率的にこなせる人も多いかもしれません。
また休みの位置を週末にまとめず、水曜を休みにすることで常に休み明けと休み前日の出勤になりモチベーションが上がりやすいという人もいます。
それから週休3日制は理論的に見ると、地球環境にも優しい制度だという点も注目されています。
というのも大勢の従業員の車通勤により、多くの二酸化炭素が排出されているからです。
しかし研究者らの試算では、イギリスが週休3日制を導入した場合、二酸化炭素の排出量はこれまでと比べて20%以上も削減できることが示されています。
さらに週休3日にすればオフィスが1日余分に閉鎖されるので、電気消費量も大幅にカットでき、節電にもつながります。
これらを踏まえると、週休3日制の導入は「従業員」にも「企業」にも「地球」にも優しい制度だと期待できるのです。
都庁が先行してこの制度を導入した背景には、都庁における「週休3日制」の試験的実施が成功すれば、その後、各企業に広く浸透させやすくなるという狙いがあります。
かつては土曜日も出勤日だったということを考えると、週休3日制が当たり前の時代も意外と早く来るかもしれません。