Credit:産業技術総合研究所
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「セミはなぜ何年も土の中で過ごすのか?」昆虫の特殊な進化の裏に潜む秘密【ナゾロジー×産総研 未解明のナゾに挑む研究者たち】 (2/5)

2025.07.02 12:00:12 Wednesday

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トコジラミはシラミじゃなくてカメムシの仲間

――森山さんがメインで研究されているものって何なんですか?

森山:結構いろんなものをやってまして、どれがメインっていうことはあんまりないんですけど、カメムシが多いですね。

――カメムシっていうと独特の臭いを思い浮かべちゃうんですが、そもそもなぜカメムシは臭いんですか?

森山:カメムシの胸のところに特別な器官が付いていて、そこから臭い物質をプシューッと出すんです。いじめられた時に出すので、何もしてない時はあまり臭くないですね。

チャバネアオカメムシの臭い物質を出す器官(臭腺)/Credit:産業技術総合研究所

――お尻かと思ってました。あと、瓶にカメムシをいっぱい詰めたら自分達の臭さで死ぬ、というのは本当ですか?

森山:はい、本当に死んじゃいます。採集に行った時、調子に乗ってたくさん容器に詰めたら全滅しちゃってたことが結構ありますね。

――へえ! てっきり都市伝説かと。何で死んじゃうんですか?

森山:臭いの物質って思っている以上に攻撃力が高いんですよね。だから、狭いところにギュッと集めちゃうと、自分達もダメージを食らってしまう。それぐらい刺激の強い物質でないと敵を追い払えないんだと思います。

――なるほど。人間にとっては臭いだけに思えますが、体に害はありますか?

森山:はい。目に入ったことがあるんですけど、1週間くらい目やにが出続けました。あと、プラスチックを溶かしちゃったりします。

――ええ! 恐るべしカメムシ。研究のためとはいえ大変ですね。

森山:他にはトコジラミの研究もしています。毎週自分の腕から血をあげて飼うこともありましたね。

――かなりショッキングですね。痒くならないんですか?

森山:刺されたときの反応は人によって違って、1回刺されると数週間から数カ月間、腫れとかかゆみが続く人もいますが、私は1時間で治っちゃうぐらい軽傷で済みます。だから同業者からはすげえ才能あるなって言われるんです(笑)。

――トコジラミって、最近の日本だと電車やホテルでよく見かけるようになったと話題になりましたが、研究者から見た対処法ってあるんですか?

森山:出先で自分の服に紛れて持ち込んでしまうのが心配な場合は、服などを帰ったらちゃんと洗濯乾燥機にかけることを心がけると良いと思います。しっかり熱で乾燥させることが重要なようです。

――洗濯乾燥で除去できるんですね。ホテルで心配な場合は、服やカバンをビニール袋に入れて縛ると良いって聞いたことあるんですが、これは効果ありますか?

森山:効果あると思います。基本的に彼らは人間が寝ているときに活動するので、心配なら寝る前に荷物をビニール袋に入れるといいかもしれません。あと、トコジラミは血を吸ってるんで、カサブタみたいな黒い糞を残すんですよ。だから、私はホテルでベッドの足元を見てこの黒い点々がついてないか一応チェックしたりします。

――なるほど。でも、カメムシの研究が多いと言っていましたが、シラミも研究しているんですね。

森山:いえ、トコジラミはシラミじゃなくてカメムシの仲間なんですよ。 

――え、そうなんですか!? でも、トコジラミとカメムシってあまり見た目は似てませんが、共通点はどこなんですか?

森山:カメムシ目に含まれるカメムシの仲間は、口がストローみたいになってて、植物もしくは動物の汁を吸って成長するんです。トコジラミは血を吸うカメムシというわけですね。ちなみに、アブラムシとかセミやアメンボもこの仲間に入ってきます。

――セミまでカメムシの仲間なんですか。カメムシの仲間が想像以上に多くて驚きました。

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