ジグザグに後退していく「ヴィクトリアの滝」とその形成
絶え間なく水が流れ落ちる「滝」は、どのように形成されるのでしょうか。
典型的な滝は、長年にわたって「流れる水」によって形成されます。
最初その場所には、緩やかな流れの河川が存在しています。
しかし時間が経つにつれ、地形や地層の違いによって、浸食に強い地層が残り、浸食に弱い地層が削られるようになります。
これにより、河川の一部で流れが急になる「遷急点(せんきゅうてん)」が形成され、棚が作られます。
さらに年月が経過すると、棚の端が徐々に削られ、遷急点が上流に移動します。
また、棚のすぐ下は水流によって深く削られていき、棚はより高さを増していきます。
結果として、私たちの知っている「高い棚から水が流れ落ちる」という滝の形が作られます。
この形成プロセスから分かる通り、地層の違いをきっかけとして滝ができるケースが多いので、地層の境界面や断層が生じた場所で滝ができやすいと考えられています。
では、ヴィクトリアの滝はどのようにして誕生したのでしょうか。
ヴィクトリアの滝は、アフリカ南部を流れてインド洋に注ぐ河川「ザンベジ川」の途中にあり、その形成にはやはり川の浸食作用が関係しています。
しかし、通常の滝とは異なり、川底が特殊です。
約1億8000万年前の火山活動によって作られた玄武岩の台地は、その後の地殻変動の繰り返しで、横方向や斜め方向の大きな割れ目を複数形成しました。
そして、その割れ目に土や砂が入って積み重なることで、柔らかい堆積岩が作られます。
つまり、北から南に流れるザンベジ川の底は、「固い地層部分」と「亀裂型の柔らかい地層部分」が組み合わさった状態になっているのです。
亀裂型の柔らかい地層部分は、川の浸食作用の影響を受けやすいため、この亀裂の形にヴィクトリアの滝が形成されることとなりました。
そして、年月の流れと共に、滝は亀裂の形に沿ってジグザグに後退します。
その際、固い地層部分だけを残していくため、滝が後退した後には、ジグザグの深い渓谷が残されることになります。
これまでこの過程は繰り返されており、現在のヴィクトリアの滝は、20万年~30万年かけてジグザグに後退していったものだと分かります。
また残された渓谷の規模からすると、かつてのヴィクトリアの滝は、現在よりも大きかったことも分かります。
今後も、ヴィクトリアの滝は北に向かって後退していくはずです。
地殻変動の亀裂によってジグザグに後退していく巨大な滝、それが他の滝と一線を画す「ヴィクトリアの滝」なのです。