ロシアンルーレットによる死亡者が後を絶たない
ロシアンルーレットがサーデズによる創作だとすれば、これは単なるフィクションに過ぎませんが、現実にはこの死のゲームを実行する人が後を絶ちません。
特に「究極の度胸だめし」という魔力に魅了される人が相当数おり、有名な事件としては1954年にR&B歌手のジョニー・エース(1929〜1954)が演奏の合間の休憩中にロシアンルーレットをして死亡しました。
アフリカ系アメリカ人の黒人解放運動の指導者だったマルコムX(1925〜1965)も若い頃にロシアンルーレットを実行したことがあると告白しています。
それから1978年公開のアメリカ映画『ディア・ハンター』の劇中で、ベトナム戦争で心に深い傷を負った兵士たちがロシアンルーレットをする有名なシーンがあります。
これが広く話題になり、劇中のロシアンルーレットを真似て、約30人が命を落としたといわれています。
また2008年の調べによると、その年のアメリカにおけるロシアンルーレットの死亡事故は少なくとも15件が報告されました。
もっと近年でも同様の事故が確認されています。
2020年2月26日、パリ北郊(ほっこう)にあるバーの店主(47歳)が、閉店後もバーに残っていた若い女性に度胸を見せようと、リボルバーに1発の銃弾を込めてロシアンルーレットを行いました。
店主が引き金を引いたところ、運悪く1発目で銃弾が放たれ、彼は帰らぬ人となってしまったのです。
さらに少し毛色は違いますが、2000年に米国テキサス州で衝撃的な事故が起こりました。
男子大学生のグループが友人宅で実銃を持ち出し、ロシアンルーレットを実行。
1人目がこめかみに銃口を当てて引き金を引いたところ、こちらも1発目で銃弾が放たれ、その学生は死亡します。
ところが驚くべきはこのロシアンルーレットで使われた実銃がリボルバーではなく、なんとセミオートだったのです。
セミオートはリボルバーとは仕組みが大きく違い、弾が1発でも弾倉に装填されていれば、自動的に一番上まで押し上げられて、引き金を引くと必ず発射されるようになっています。
つまり、リボルバーのように空撃ちになることは故障でもしていない限り原則としてあり得ず、100%弾が放たれる銃だったのです。
このようにとんでもない間違いで尊い命を失ってしまう恐ろしいケースもあります。
ただこうした事故を除けば、ロシアンルーレットは基本的にフィクション作品の小ネタやゲームの一つとして楽しまれる娯楽となっています。
映画ですと先ほど挙げた『ディア・ハンター』の他に、北野武監督の『ソナチネ』(1993)や韓国の人気ドラマ『イカゲーム シーズン2』(2025)にもロシアンルーレットが登場します。
また他にもアニメや漫画、小説でもよく描かれますし、日常的にはタコ焼きやお寿司、シュークリームのどれか一つに大量のワサビを仕込んだゲームを「ロシアンルーレット対決」などと呼称して楽しまれています。
みなさんも友人や家族と一緒にやったことがあるのではないでしょうか。
このようにロシアンルーレットは小説家による創作というフィクションの枠を飛び越えて、現実世界に多大な影響を及ぼし続けているのです。