スマホは本当に心の負担になっているのか?
私たちはスマートフォンを使うことで多くの利便性を得ています。
SNSで友人とつながり、ニュースをチェックし、仕事の連絡もすぐにできます。
しかし一方で「スマホを使いすぎているのでは?」と不安を感じる人も多いでしょう。
アメリカの調査では、約60%のスマホユーザーが「スマホを使いすぎている」と感じており、30歳未満ではその割合は80%に達することが報告されています。
また過去の研究ではスマホの長時間使用がメンタルヘルスの悪化と関連していることが示唆されていました。
特にスマホの通知やSNSの情報が常に注意を引きつけ、集中力を妨げることが指摘されています。
しかし、これらの研究の多くは相関関係に基づいており、本当にスマホの使用が直接的な悪影響を及ぼしているのかは明確ではありませんでした。
そこで今回の研究では「スマホのインターネット利用を遮断することで、メンタルヘルスや注意力が本当に改善するのか?」という因果関係を明らかにすることが目的とされました。

研究チームは、アメリカとカナダの467人のスマホユーザー(平均年齢32歳、女性63%・男性37%)を対象に、1カ月間の追跡調査を実施しました。
参加者は、スマホのインターネットを遮断するアプリ「Freedom」をインストールし、2週間にわたりWi-Fiおよびモバイルデータをブロックしました。
ただし、スマホを使った通話やテキストメッセージは利用可能とし、完全にデジタル機器を遮断するのではなく、スマホのインターネットのみを制限しました。
そのため、パソコンを使えばネット利用は自由に許可されています。
研究では、以下の3つの指標を測定しました。
・主観的幸福感:ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生満足度を測定
・精神的健康:うつ、不安、怒り、社交不安などの症状を評価
・持続的注意力:注意力の持続性を客観的に測定
そして実験の結果、スマホのインターネットをブロックした2週間で、すべての指標が顕著に改善しました。
・主観的幸福感が向上し、ポジティブな感情が増加
・不安やうつの症状が軽減し、メンタルヘルスが改善
・持続的注意力が向上し、注意散漫が減少
さらに注意力の向上はスマホでのネット利用が再開された後も持続することが確認されました。
これは短期間のスマホ断ちが、持続的な認知機能の改善につながる可能性を示唆しています。