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睡眠障害は恐怖記憶を忘れやすくする効果もあった (2/3)

2025.03.07 20:00:23 Friday

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翌日に睡眠を奪うだけで恐怖記憶が忘れ去られた

睡眠障害は恐怖記憶を忘れやすくする効果もあった
睡眠障害は恐怖記憶を忘れやすくする効果もあった / 恐怖条件付けの翌日に睡眠を奪うと恐怖反応が下がる様子。 ここでは、マウスが「音(トーン)と電気刺激」を組み合わせることで恐怖を学習した翌日に、6時間だけ眠らせないようにした場合(睡眠剥奪群)と、普通に眠らせた場合(コントロール群)の“フリーズ行動”を比較しています。 グラフの横軸は音を聞かせた試行回数(あるいは時間の経過)、縦軸はマウスがじっと身動きしない「フリーズ」をしていた割合や秒数などを示すことが多いです。 ふつうは、恐怖が強いときほどフリーズが増えますが、睡眠を奪われた群ではフリーズ行動が明らかに減少しています。また、この効果は翌日になっても続き、「ただ寝不足で動けない」というよりも「恐怖そのものが弱まっている」可能性を示しています。こうした結果は、学習直後ではなく、翌日でも睡眠不足が記憶(特に恐怖)に大きな影響を及ぼすことを示す重要な証拠です。/Credit:Allison R. Foilb et al .Neuropsychopharmacology (2024)

今回の実験ではまず、マウスに「音(トーン)と足にごく軽い電気刺激(フットショック)を同時に提示する」という方法で“恐怖”を学習させました。

これは「恐怖条件付け」と呼ばれ、音を聞くと「痛い思いをするかもしれない」と感じるようになる仕組みです。

電気刺激は人間の静電気程度のビリッとしたレベルなので、マウスが大きな怪我をするわけではありませんが、恐怖を覚えるには十分な強さです。

ユニークだったのは、恐怖を学習させた直後ではなく、翌日の朝から6時間だけマウスを寝かさないようにした点です。

従来の研究では「学習後、すぐに寝かさない」ことが多かったのですが、実際のトラウマ(事故や災害など)で“瞬時に”睡眠を奪うのは難しいという問題があります。

そこで研究チームはあえて時間をあけ、マウスが十分に休んだあとに睡眠を妨げてみたわけです。

睡眠を奪う方法にも工夫がありました。

ストレスが強い機械仕掛け(ケージ内を棒が自動でぐるぐる回る)ではなく、**「Gentle Stimulation(優しい刺激)」**と呼ばれる手段を使って、なるべくマウスのストレスを増やさないようにしました。

具体的には、巣材(ケージ内の寝床材料)を新しくして好奇心を刺激したり、ケージを軽く叩いたり、やわらかいブラシでそっと体をつついたりして、マウスがうとうとし始めたら目を覚まさせるという方法です。

実際、この方法で睡眠を奪ったマウスの血液を調べてもストレスホルモン(コルチコステロン)が極端には増えず、“追加のストレス要因”になりにくいことが確認されています。

6時間の睡眠剥奪が終わったあとは、改めて「音(トーン)だけ」を聞かせて反応を測定しました。

そしてマウスがどれくらい“じっと動かなくなるか(フリーズ行動)”によって恐怖の度合いを判断したところ、睡眠を奪われたマウスは奪われなかったマウスに比べてフリーズ行動が明らかに少なくなっていたのです。

これはつまり、「音=恐怖」の記憶が弱まっている可能性を示します。

さらに翌日になってもう一度テストしても、同様にフリーズ行動が減少していたことから、「ただ疲れて動けない」のではなく、実際に恐怖が薄れていると考えられます。

また、研究チームはマウスの脳を調べ、恐怖や不安の制御に深く関わる「扁桃体」などの領域で神経細胞の成長や働きを助ける**BDNF(脳由来神経栄養因子)**の量が増えていることも突き止めました。

こうした分子レベルの変化が、恐怖反応を抑える鍵かもしれないとみられています。

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