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Credit: This nurse can smell Parkinson’s disease | Joy Milne | TEDxManchester(2023)
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匂いでパーキンソン病を予知できる女性、その驚異の嗅覚能力とは?

2025.04.22 12:00:24 Tuesday

パーキンソン病は、手足の震えや動作の緩慢といった運動機能に障害が生じる神経変性疾患です。

しかし実は、それらの症状が現れるよりずっと前に、患者が発する「匂い」に変化が起きていることがわかっています。

ただその匂いは極めて微妙な変化でしかなく、普通の人では絶対に気付きません。

ところが、この匂いを嗅ぎ分け、医師たちが気づくよりも早くパーキンソン病を察知できる女性がいるのです。

それがスコットランド在住の看護師、ジョイ・ミルン(Joy Milne)さんです。

その驚くべき嗅覚能力に、世界中の医師たちが注目しています。

She Can Smell Parkinson’s—Now Scientists Are Turning It Into a Skin Swab https://www.zmescience.com/science/news-science/she-can-smell-parkinsons-now-scientists-are-turning-it-into-a-skin-swab/

パーキンソン病と診断される17年前に気づいていた

ジョイ・ミルンさん(75歳)は、スコットランド出身の元看護師です。

彼女は生まれつき嗅覚過敏症(ハイパーオスミア)」という、匂いに対する感度が極めて高い体質を持っていました。

そんなある日、ジョイさんは夫レスさんの体臭がじゃこうのような苦くて渋いワックス臭に変わったことに気づきます。

それから夫に特に変わった様子は見られなかったものの、次第に運動機能に異変が現れ始め、医師により正式にパーキンソン病と診断されたのです。

しかし、レスさんに診断が下されたのは、ジョイさんが匂いの変化に気づいてから実に17年も経った後のことでした。

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ジョイさんと夫のレスさん/ Credit: This nurse can smell Parkinson’s disease | Joy Milne | TEDxManchester(2023)

ジョイさんは「当時は夫の匂いの変化の意味がわからなかったものの、後にパーキンソン病と診断されたとき、すべての謎が解けたのです」と話しています。

さらに彼女は、パーキンソン病患者たちが集う支援グループの場でも、同じ独特な匂いを再び嗅ぎ取っていました。

これは単なる偶然ではないと確信したジョイさんは、科学者たちと手を組むことになります。

2013年、マンチェスター大学の化学者パーディタ・バラン教授と出会ったジョイさんは、ある実験に挑戦しました。

それはパーキンソン病患者と健常者が一晩着たTシャツを嗅ぎ分けるというものです。

その結果、ジョイさんはほぼ完璧に両者の匂いを正しく識別することに成功しました。

ただ一枚だけ、対照群(健康な人)のTシャツをパーキンソン病患者のものと誤認しています。

ところが驚くべきことに、匂いを誤認されたその人は実験から9カ月後にパーキンソン病と診断されたのです。

つまりジョイさんの鼻は、未来に起こる病の兆しさえも嗅ぎ取っていたのです。

このエピソードをきっかけに、科学は彼女の嗅覚に追いつこうと本格的な研究に乗り出しました。

次ページパーキンソン病の「匂いの正体」を突き止める

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