ライオンと戦った物的証拠はなかった
古代ローマの剣闘士、通称グラディエーターは、人々の前で戦いを演じる「見世物」の主役でした。
彼らの存在は映画などのフィクション作品にもなっており、長い歴史の中でも非常に人気の高い題材です。
グラディエーターたちは人間同士で戦うだけでなく、クマやライオンなどの猛獣と戦う場合もあったことが文献やモザイク画によって明らかになっています。
しかし実際にそうした戦いがあったことを示す「物理的な証拠」は、これまで見つかっていませんでした。
研究主任のティム・トンプソン(Tim Thompson)氏はこう話します。
「これまで古代ローマ時代の剣闘試合についての理解は、主に歴史文献や美術的表現に頼っていました。
今回の発見は、そうしたイベントが実際に行われていたことを示す初めての直接的・物理的証拠であり、この地域における古代ローマ時代の娯楽文化の理解をさらに深めるものです」

研究チームは今回、イングランド北部の都市ヨークにある古代ローマ時代の墓地「ドリフィールド・テラス」から回収された遺骨を新たに調査しました。
この墓地では2010年に、屈強な若い男性82体の骨格が見つかったことで知られ、主に剣闘士たちの遺体が埋葬された場所として知られます。
当時の専門家たちは歯のエナメル質の分析から、これらの剣闘士たちがローマ帝国のさまざまな属州から来ていたことを突き止めています。
そうした背景の中で、チームは驚くべき遺骨を発見したのです。