たばこ税の増加で、子供の生存率がUP
今回の研究は、「たばこ税の引き上げが社会経済的格差を超えて子供の死亡率に影響を与えるのか」という問いから出発しました。
従来の研究では、たばこ税が喫煙率を下げる効果は知られていましたが、それが子供の生存率にも寄与しているのかは、あまり明らかにされていませんでした。
このような背景を踏まえ、研究チームは2008年から2020年までの13年間にわたって、94の低・中所得国における5歳未満の死亡率を所得階層ごとに追跡し、たばこ税の水準と子供の死亡率との関連性を分析しました。

その結果、たばこ税が小売価格の10%増加するごとに、すべての所得階層において子供の死亡率が約2%ずつ低下するという明確な傾向が見られたのです。
とりわけ、WHOが推奨する75%以上の税率を達成している国では、最貧層の子供の死亡率が約6%も減少しており、税の高さが命を救う尺度になっていることが示されました。
また分析によれば、今回の研究対象となった94か国のうち、84か国がまだWHOが推奨するたばこ税の基準に達しておらず、もしすべての国が税率を75%以上に引き上げていれば、2021年の1年間だけで28万人以上の子供の命が救えた可能性があると推定されています。
税金というと、つい「取られるもの」としてネガティブに捉えがちですが、この研究は、税金がいかに人々の命や未来にポジティブな影響を与えるかをデータで示した貴重な例です。
特に子供という、自己防衛できない存在にとって、社会がどのような制度を選ぶかは生死に関わります。
日本を含めたすべての国にとって、この研究は子供の命を守るために何ができるのかを改めて問い直す重要な機会となるでしょう。