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脳波検査の常識が覆る「髪の毛」みたいな電極が登場 / Credit:(左)Canva,(右)Penn State
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脳波検査の常識を覆す「髪の毛」みたいな極細電極が開発される

2025.05.08 06:30:34 Thursday

脳波(EEG)検査と聞いて、あなたはどんな光景を思い浮かべるでしょうか?

おそらく多くの人が、太い電極をびっしり貼りつけられた、まるでマスクメロンのような網目状の頭を想像することでしょう。

しかしそんなスタイルが、大きく塗り替えられようとしています。

アメリカのペンシルベニア州立大学(Penn State)を中心とする研究チームが、人の髪の毛そっくりな形と質感を持つ新型EEG電極の開発に成功したのです。

この電極は、見た目も装着感も限りなく「髪の毛」に近く、性能面でも従来型を凌駕する可能性を秘めています。

研究の詳細は、2025年3月18日付で科学誌『npj Biomedical Innovations』に掲載されました。

Single hair-like electrode outperforms traditional 21-lead EEG https://newatlas.com/medical-devices/3d-printed-hairlike-eeg-electrode/ The future of brain activity monitoring may look like a strand of hair https://www.psu.edu/news/research/story/future-brain-activity-monitoring-may-look-strand-hair
Stick-and-play bioadhesive hairlike electrodes for chronic EEG recording on human https://doi.org/10.1038/s44385-025-00009-x

脳波検査の常識を覆す!「髪の毛」みたいに細い電極が登場!

脳波(EEG)検査とは、脳の神経活動に伴って発生する微弱な電気信号を頭皮から測定する技術です。

睡眠障害やてんかん、認知症、脳卒中の診断など幅広く用いられており、近年ではブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の基盤技術としても注目されています。

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従来の脳波検査 / Credit:Canva

しかし、その有用性に反して、EEG検査にはいくつかの課題がつきまとってきました。

最も大きな問題は、従来の電極が扱いにくく、快適性に乏しいという点です。

現在広く使用されている金属電極は、導電性ジェルを必要とします。

このジェルは時間の経過とともに乾燥し、電極の接触品質が低下してしまいます。

そのため、長時間の測定には向いていません。

さらに、頭皮に密着させるためにキャップや粘着テープで固定する必要があり、利用者にとっては物理的にも心理的にも大きな負担になります。

また、頭髪の存在が問題でした。

髪が多いと、電極が頭皮としっかり接触せず、ノイズが入りやすくなります。

特に日常生活の中で装着し続けるには、目立たず、かつ安定して脳波を取得できるデバイスが必要でした。

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まるで髪の毛のような極細電極を開発。装着しても目立たない / Credit: Tao Zhou(Penn State)et al., npj Biomedical Innovations(2025)

こうした課題を解決するために、今回の研究では髪ののように細く、柔軟で、目立たず、しかも高性能な電極が設計されました。

この新型電極は、3Dプリンタで髪の毛状に印刷されており、電極部には導電性ハイドロゲルを使用。

電極自体は生体接着剤を使用して頭皮に取り付けられますが、市販のEEGジェルの2倍の強度があると判明しています。

しかもシャワーを浴びたり、運動で発汗したりしても剥がれず、はがすとき剥がす時に皮膚にダメージを与えることもありません。

髪の毛のように細く、目立たず、貼るだけで使える電極なのです。

では、この新しい電極はどれほどの性能を有しているのでしょうか。

次ページ驚異の耐久性と伸縮性!「髪の毛型」電極は幅広い可能性を秘めている

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