体格と自殺死亡リスクに関連性を発見
自殺(自ら命を絶つ行為)は、世界的に見ても深刻な公衆衛生上の問題です。
自殺は通常、うつ病や不安障害などの精神的な問題と、社会的・感情的・経済的なストレス要因とが複雑に絡み合って生じるものです。
自殺はすべての年齢層で起こり得ますが、特に10代、高齢者、そして社会的に疎外された集団で高い傾向があります。
自殺は一つの命を絶つだけでなく、家族や友人、周囲の地域社会にも深い影響を与えます。
これまでの研究でも、自殺リスクに関わるさまざまな遺伝的、社会的、身体的要因が指摘されてきました。
たとえば、セロトニンという神経伝達物質を利用する脳のシステムに影響する特定の遺伝子変異、独り暮らし、内向的な性格、トラウマ体験、経済的困難などの社会的要因が含まれます。
また、うつ病、片頭痛、睡眠時無呼吸症候群、不眠症などの慢性的な身体・精神的疾患も、自殺リスクの上昇と関係しています。

研究チームは今回、韓国人を対象に、BMI(肥満度を表す体格指数)と自殺による死亡リスクとの関連性を調べました。
本調査では、韓国の国家健康情報データベース(NHID)のデータを使用。これは健康診断の結果や保険請求などを含む包括的な医療データベースです。
調査対象は、2009年に国家健康診断を受けた19歳以上の成人404万5081人です。
彼らは2009年から2021年末まで追跡され、自殺による死亡があった場合にはその時点までのデータが用いられました。
研究では、BMI、腹囲(内臓脂肪の指標)、うつ病、統合失調症、不安障害、摂食障害などの診断歴のほか、その他多くの医療状態を考慮しました。
さらにアルコール摂取量、世帯収入、血糖値やセロトニンの数値も分析に含められました。
その結果、低体重の人は標準体重の人に比べて、自殺で死亡するリスクが44%も高いことが判明したのです。
一方で興味深いことに、太り気味の人では21%、肥満の人では29%も自殺の死亡リスクが低下していました。
これらの関連は、参加者にうつ病の診断があったかどうかや、独り暮らしかどうかにかかわらず、有意なままでした。
この研究は、自殺と体格指数との関連に関する科学的知見を深めるものです。
では、なぜやせ気味の人は自殺の死亡リスクが高く、太り気味の人は死亡リスクが低くなっていたのでしょうか?