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正しい投票とは何なのか?選挙の研究が示す“考えた一票”をする方法 (2/2)

2025.07.16 17:10:56 Wednesday

前ページ多くの人が陥るさまざまな投票判断に関する研究

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完璧じゃなくていい。「考えた一票」にするための3つのヒント

政治が若者を無視しているのではなく、若者の存在感がなさすぎるのが問題
政治が若者を無視しているのではなく、若者の存在感がなさすぎるのが問題 / Credit:canva

すべての候補者の政策を読み比べたり、演説をじっくり聞いたりするのは、現実的にはとても難しいことです。

仕事や学校、家庭のことで毎日が忙しい中で、投票のために何時間もかけて調べるのは、多くの人にとってハードルが高いものです。

でも、だからといって「なんとなく」で決めるしかないというわけではありません。

ここでは、特別な知識がなくても、短い時間で実行できる「納得のいく投票」のヒントを3つ紹介します。

ベストを選ぶのではなく「ワーストを選ばない」

まず1つ目の方法は、「これだけはイヤだ」と思う候補や政党を避けるという考え方です。

これは「ネガティブ投票(negative voting)」と呼ばれるもので、完璧な選択肢がないときに、「もっとも避けたい選択肢を除外する」というやり方です。

たとえば、「子育て支援に反対している政党には入れたくない」とか、「女性の権利について軽んじた発言をした人は信頼できない」といったように、自分が譲れないポイントを1つ決めて、それをもとに投票先を選びます。

全部の政策を比べなくても、こうした1つの“NO”の感覚が、投票行動のきっかけになります。

選挙で最も影響を持つのは、投票結果よりも、投票率の分布です。

ある政党が「20代の投票率が10%しかない」と知れば、その世代のニーズは無視されやすくなります。逆に「若年層の投票率が上がってきている」となれば、政策に配慮せざるを得なくなります。

政治家は当選しなければ無職になってしまいます。政党は当選者が減ればその力が大きく減退します。投票率の高い層を無視して選挙に臨むなんて賭けはできません。

つまり、「誰かに勝たせる」ことよりも、「とりあえず嫌いな政治家を避けて一票」「勝たせたくないところを避けて一票」という消極的な動機であっても、その投票は確実に政治に対する“圧力”になります。

SNSを見るときは「いいねの数」より“理由”に注目する

2つ目のヒントは、SNSを見るときに「いいねの数」や「リツイートの多さ」に流されないことです。

人気の投稿や派手な言葉に注目が集まりやすいのがSNSの特徴ですが、そこで気をつけたいのは、「その主張にどんな理由や根拠があるか?」という視点です。

たとえば、「この政党は信用できる!」と書かれた投稿が10万件のいいねを集めていたとしても、それだけでは信用に値する情報とは言えません。

もしその投稿に具体的な数字や事例、政策の内容が含まれていれば、判断材料になりますが、ただ感情的な意見だけなら注意が必要です。

このように、SNSでは「数」より「内容」に目を向けることが大切です。

こうした視点の持ち方は、認知心理学では「確証バイアス(confirmation bias)」という言葉でも説明されています。

これは、自分の考えに合う情報ばかりを信じて、反対の意見や不都合な事実を無視してしまう心のクセのことです。

SNSの世界では、この確証バイアスが強く働きやすく、自分の見たい意見だけを見てしまいがちになります。

だからこそ、確かにいいこと言ってるかも、という投稿を見つけたとしても、それに対して反対する人は何を言っているのか? なぜそう思うのか? そうした視点で見る習慣を持つことが、正しい判断への第一歩になるのです。

「選挙後に1回だけ振り返る」を習慣にする

3つ目のヒントは、とてもシンプルです。

選挙が終わったあとに、一度だけでいいので、自分が投票した候補者や政党が何をしているかを見直してみるということです。

たとえば、選挙の半年後でも1年後でも、検索したりその人のSNSを見てみてください。

選挙中に言っていたことをちゃんと実行しようとしているか、あるいはまったく別の方向に進んでいないかをチェックするだけで、次の選挙のときの判断がぐっとしやすくなります。

これは難しい作業ではありません。

一度、自分の選択を振り返るだけで、「前にこうだったから今回はこうしよう」と考える力がつきます。

これを少しずつ積み重ねることが、「考える市民」としての姿勢につながっていきます。

私たちは政治の専門家ではありませんし、すべてを知っている必要もありません。

でも、「なんとなく」や「人気だから」ではなく、自分なりの理由で一票を入れることは、誰にでもできます。

そしてその一票は、たしかにこの社会の方向をつくる力になります。

難しいことはできなくても、「ちゃんと考えた一票を投じた」と思えること。

それが、選挙を自分ごとにするいちばんの近道なのです。

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正しい投票とは何なのか?選挙の研究が示す“考えた一票”をする方法 (2/2)のコメント

ゲスト

これからは最高裁の判事の選挙のように落としたい候補を選ぶ選挙にするべきでしょう。
それの票が少ない人から当選です。
そうすれば候補者も有権者に選ばれた、ではなく、有権者から存在を許されたというふうに認識が変わるでしょうから汚職に手を染めにくくなるかもしれません。

ゲスト

私が若い頃は、投票してもどうせ変わらないという空気が支配的でしたが、
最近はこの記事にもあるように、投票率自体が政治に影響を与えるという言説が増えてきていて、良い変化だなと感じます。

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