乳酸菌で目覚めたステビア葉エキスの「がん細胞を殺す力」
乳酸菌で目覚めたステビア葉エキスの「がん細胞を殺す力」 / Credit:Canva
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乳酸菌で目覚めたステビア葉エキスの「がん細胞を殺す力」 (3/3)

2025.07.28 21:00:54 Monday

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乳酸菌と植物エキスの融合が「がん細胞」を殺す

乳酸菌と植物エキスの融合が膵臓がん細胞を殺す
乳酸菌と植物エキスの融合が膵臓がん細胞を殺す / で示された結果は、発酵ステビア葉エキス(FSLE)から得られた「クロロゲン酸メチルエステル(CAME)」という成分が、膵臓がん細胞(PANC-1)の増殖をどのように抑えるのかを詳細に解明したものです。 具体的には、この実験はCAMEという物質が膵臓がん細胞に対して「細胞周期の停止」と「細胞死(アポトーシス)の誘導」の2つの方法で抗がん作用を発揮していることを示しています。まず(A)のグラフは、CAMEを膵臓がん細胞に与えた後の細胞周期の変化を示しており、細胞が分裂して増殖するためのサイクルがG0/G1期という初期段階で停止することを示しています。G0/G1期というのは、細胞が新たに分裂を開始するための準備段階に相当し、ここで細胞を止めてしまえばそれ以上増殖することができません。つまり、CAMEはがん細胞が増え続けることを抑える効果を持つことがわかります。 次に(B)のグラフでは、細胞が自然に死滅する仕組みである「アポトーシス」がCAMEによって引き起こされる様子が示されています。CAMEを与える時間を長くすると(12時間、24時間、48時間)、アポトーシスを起こしている細胞の割合が徐々に増えていきます。特に48時間後では、コントロール(何も与えていない細胞)と比べて顕著にアポトーシス細胞が増加していることが統計的に証明されています(**p < 0.01)。これによって、CAMEはただ細胞の増殖を止めるだけでなく、積極的にがん細胞を死滅させる作用があることがはっきりと示されました。まとめると、この実験はCAMEが膵臓がん細胞に対して2つの重要な効果、すなわち「細胞を初期段階で停止させることによる増殖抑制」と「アポトーシスを促進することによるがん細胞の自滅」を引き起こすことを明らかにしています。これらの効果によって、CAMEが膵臓がんの治療薬として大きな可能性を持つことがわかります。/Credit:Stevia Leaf Extract Fermented with Plant-Derived Lactobacillus plantarum SN13T Displays Anticancer Activity to Pancreatic Cancer PANC-1 Cell Line

「植物エキスと乳酸を混ぜたものが、がん細胞を殺す」というと、これまではにわかに信じない人も多かったでしょう。

がん細胞と戦うには副作用の強い薬や放射線治療が必要で、植物エキス+乳酸菌のようなソフトなイメージのものは溺れる人が掴む最後の藁のような印象が強かったからです。

しかし今回の研究によって、「甘味料ステビアを特定の乳酸菌で発酵させると、がん細胞だけを選んで攻撃できる強力な抗がん物質が生まれる可能性」が示されました。

特に今回注目された膵臓がんは、早期発見が非常に難しく、手術や既存の抗がん剤による治療効果も限定的という現状があります。

このため、膵臓がんに対する効果的な新薬や治療法は、医療現場でも強く求められています。

今回の発酵ステビアエキス(FSLE)が示した正常な細胞にはほとんどダメージを与えず「がん細胞を選択的に狙い撃ちする」効果は、まさにそうした治療の理想的な条件を満たしています。

というのも現在使われている抗がん剤の多くは、がん細胞だけでなく健康な細胞にもダメージを与えてしまうため、患者の負担がとても大きくなっています。

そのため、「がん細胞だけを選び、正常細胞を守る薬」は、がん患者にとって非常に望ましいものです。

今回の研究でステビアから得られた発酵エキス(FSLE)は、まさにこうした理想的な性質を持っていることが明らかになりました。

しかし、現時点ではまだ研究室で培養した細胞での結果に過ぎません。

今後、マウスなどの動物実験を通じて、実際に生き物の体内で同じ効果が得られるのか、副作用はないのか、どのくらいの量で効果が現れるのかなど、さらに詳しい検討が必要になります。

研究チームはすでに動物モデルを用いた実験を計画しており、その結果によって、この発酵ステビアエキスが現実の医療にどれほど近づけるかが明らかになるでしょう。

さらに今回の研究で注目したいのは、「乳酸菌による発酵」という手法そのものです。

ヨーグルトや漬物などの食品にも使われる乳酸菌は、健康に良い微生物(プロバイオティクス)としてすでに広く知られています。

しかし、この乳酸菌が植物のエキスに作用し、がんを攻撃する新たな物質を作り出せるという発見は非常に画期的です。

これは、プロバイオティクスを「がん治療の新しいツール」として利用できる可能性を示しています。

こうした植物と微生物の「自然な組み合わせ」による新しい抗がん剤の可能性は、がん治療に新たな希望をもたらすかもしれません。

今後さらに詳しい研究が進めば、ステビア由来の天然の抗がん剤が私たちの身近な存在として登場する日が来る可能性も十分にあります。

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乳酸菌で目覚めたステビア葉エキスの「がん細胞を殺す力」 (3/3)のコメント

ゲスト

「僕の大好きなステビアさんはすごく甘い…でもそれだけじゃない…。」
でおなじみの甘いだけじゃないステビアさんということでいいのかな?

ゲスト

従来の一般的な抗がん剤は、癌の特徴である細胞分裂の早い細胞にダメージを与えるように出来ているので、同じく細胞分裂の回転が速い正常な細胞がダメージを受けやすい。なので、抗がん剤の副作用もそういった部分がダメージを受けた結果の症状が並んでいる。
今回正常細胞の対比として、細胞分裂のスピードが速い組織の細胞は使用されていない。なので動物実験の結果で抗がん剤として使用出来るかがもう少し分かるかと。
今の段階では投資を呼び込む目的の結果発表かな

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