シワの正体は引っ張られたときの「横縮み」だった

研究の結果、年齢によって皮膚の挙動は劇的に変化することが明らかになりました。
まず、年を取った皮膚は、引っ張られたときに横方向への縮みが顕著になることがわかりました。
つまり、同じ力を加えても、若い皮膚よりも高齢の皮膚は強く横に縮むのです。
この横縮みの度合いは「ポアソン比(Poisson’s ratio)」と呼ばれる値で表されますが、驚くべきことに高齢者の皮膚では、この値が異常な数値を示しました。
これは、皮膚が単に細くなるのではなく、中に含まれる水分が外へと押し出されて体積そのものが減っていることを示しています。
実際に、皮膚を引っ張る前後でその重量や体積が減少しており、内部の液体が脱水されていることが確認されました。
この現象を研究責任者のガイ・ジェルマン氏は、次のようにたとえています。
「シリーパティ(伸びる粘土)を引っ張ると、横方向に細くなりますよね。
皮膚も同じで、年齢とともにその縮み方が大きくなり、最終的には“くしゃっ”と折れてしまう。それがシワになるんです」
さらに、高齢の皮膚では、シワがより深く、より幅広く、より曲がりやすく、よりまっすぐなシワになる傾向があることも分かりました。
これには、皮膚構造の変化(表皮と真皮の境界の平坦化やコラーゲンの減少)が影響している可能性があります。
とはいえ、この研究にはいくつかの制限があります。
たとえば、実験は一方向の引っ張りしか検証しておらず、日常生活で皮膚が受ける多方向のストレスを再現できていません。
また、紫外線によるダメージ(光老化)を避けた設計のため、現実の肌の老化とは若干異なる面があります。

それでも、この研究は「なぜ人は年をとるとシワができるのか?」という問いに初めて力学的な答えを与えた意義深いものです。
加えて研究チームは、長期間にわたって日光を浴びることが老化と同じ影響を肌に与える可能性を次のように指摘しました。
「加齢と光老化は似たような結果をもたらします。
だからこそ、外で過ごす時間が長い人は日焼け止めを忘れないでください。
そのことを未来のあなたはきっと感謝するはずです」
今回の発見は、より効果的なシワ予防を開発するのに役立つはずです。