セレブとの「一方通行なつながり」が心に及ぼすもの
近年のSNSの普及によって、有名人の私生活や日々の発言に触れる機会は格段に増えました。
InstagramやTikTok、YouTubeなどを通じて、私たちはまるで「友達」のように彼らの生活を追いかけることができます。
しかし、そうした関係は実際には一方通行であり、心理学の分野では「パラソーシャル関係」と呼ばれています。
つまり、本人は自分を知らないのに、こちらだけが深くつながりを感じている関係です。

この「セレブとの一方通行なつながり」が心にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、アメリカ南東部の大学に通う215人の学生を対象に行われたのが、今回の研究です。
参加者には、好きなセレブについてどの程度の憧れや関心を持っているかを測定する「セレブ態度尺度(Celebrity Attitude Scale)」に加え、ナルシシズム(自己愛)傾向や物質主義的価値観を評価する複数の心理尺度に回答してもらいました。
さらに注目されたのは、セレブと自分自身との「類似感」を問う項目です。
たとえば「性格が似ていると思う」「外見が似ていると思う」「ライフスタイルに共通点を感じる」といった質問を通じて、どれほど“自分ごと”としてセレブを見ているかが測られました。
その結果、セレブへの強い憧れを持つ人ほど、「脆弱なナルシシズム(vulnerable narcissism)」─つまり、感情の不安定さや自己像への過剰なこだわり、他者からの批判への過敏さなど─のスコアが高くなる傾向があることが判明したのです。
また、セレブとの類似感が強い人ほど、この傾向がさらに強まりやすいこともわかりました。