17歳の少女が「溝畑・竹内予想」が偽であることを証明

では、カイロさんはどのようにして予想を打ち破る反例を作り出したのでしょうか?
ポイントは波の配置の仕方にあります。
数学的には「関数の周波数成分をどこに集中させるか」という問題ですが、ここでは池に石を投げるアナロジーで説明してみましょう。
普通は石を投げ入れる位置(波の発生源)がばらばらだと、波紋の重なり方もまばらになり、大きなずれや誤差は生じにくいものです。

カイロさんは「波を起こす位置」を高次元の特別な格子状に配置し、その格子を低次元空間に投影して得られるパターンを利用する方法を考案しました。
こうすると投影パターンの性質により、水面上の思いもよらない位置で波紋が重なり合い、干渉が特に強まる箇所が生まれます。
この配置では、どの方向から直線的に見ても一度に見える波の数は限られますが、全体としてはわずかな「上乗せ効果」が積み重なり、特定の場所で波の強さが理論上の見積もりを上回ることになります。

その結果、従来の予想が前提としていた見積もり(「波の模様は細い管状に収まる範囲でしか強くならない」という想定)では抑えきれない「上振れ」が必ず生じる配置を作れることがわかりました。
カイロさんの論文では、この「対数的な誤差(log R損失)」が避けられない場合が存在することを厳密に示しています。
つまり「どんなにうまく波を選んでも、完全には予想通りにならない」ことを証明し、「溝畑・竹内予想」は反例によって否定されたのです。
わずかながら予想を上回る程度の「破れ」ではありますが、一度でも破れれば予想は崩壊します。
カイロさんが作り出したたった一つの例によって、溝畑・竹内予想は一般には成り立たないことが証明されたのです。