・復讐心を抑えようとする脳の働きが発見された
・実験では被験者が怒りを感じるような対人ゲームを行い、被験者の脳活動を調査した
・実験の結果から、ゲーム相手に復讐しない被験者は背外側前頭前野が活発であることが分かった
「復讐は何も生まない」――
わかっていても、そんな言葉一つでは抑えられないのが復讐心です。ではそのような怒りを抑えられる人とそうでない人とでは何が違うのでしょうか?
ジュネーブ大学の研究者らが、経済ゲームを用いて復讐心を抑えようとする脳の働きを発見しました。
Distinct Brain Areas involved in Anger versus Punishment during Social Interactions
調査では、被験者25人に「怒り」を生じさせる不平等な経済ゲームを実施。ゲームは被験者1人と用意されたプレイヤー2人の合計3人で行い、その中で経済交流が行なわれます。用意された2人のプレイヤーの行動はあらかじめ決められており、一方は互いに利益となる交流を行おうと被験者にメッセージを送り、もう一方は自分だけ利益を得るような行動をとるというものでした。
ほとんどの場合、被験者は初めに2人のプレイヤーに対して利益を平等に分配していました。しかし、一方のプレイヤーが挑発行為を始めると、被験者は怒り、中には挑発するプレイヤーの分配を少なくするといった「復讐行動」をとる被験者も現れました。そして研究者らは、その際の被験者の脳をMRIで撮影することにより、脳の活動について調査しました。
調査の結果、挑発するプレイヤーに「復讐しなかった」被験者は、脳の「背外側前頭前野」の活動が活発であり、反対に「復讐した」被験者は活動が少ないことが分かりました。
これは、背外側前頭前野の機能が「復讐心」と密接に関わっていることを示しています。また、被験者が「怒り」を感じているときは、脳の「側頭葉上部」や「扁桃体」が活発な動きを見せていました。
背外側前頭前野とは、認知や意欲、判断に関する役割を担っており、大脳の司令塔と呼ばれています。また、不安や悲しみ、自己嫌悪などの感情を司る扁桃体の活動を制御している箇所です。
今回の研究から、怒りを感じて活発になる脳領域とは異なる背外側前頭前野が、復讐心を抑える役割を担っていることが分かりました。背外側前頭前野はマインドフルネスで機能が活性化するという報告もあります。今にも「百倍返し」してしまいそうな人は、瞑想やヨガなどを行ってみるとよいかもしれませんね。
via: ScienceDaily / translated & text by ヨッシー