「抗がん作用」を持つと判明!
研究チームは今回、牛樟芝を人工環境で培養し、そこから「硫酸化多糖類(SPS)」と呼ばれる特殊な糖分子を抽出しました。
SPSはグルコースやガラクトース、硫酸基が結合してできた糖分子の一種で、体内の細胞にさまざまな作用を及ぼすことで知られています。
さらに抽出された数種類の化合物の中で、特に注目されたのが「N50 F2」です。
研究によると、N50 F2は細胞実験において以下のような顕著な作用を示しました。
まず、炎症に関連する物質の働きを抑える効果です。
慢性的な炎症は多くの生活習慣病や免疫異常に関わっており、IL-6やTNF-αといった炎症マーカーの過剰な分泌を減らすことが確認されました。
これにより、体が不必要に炎症状態に陥るのを防ぐ可能性があります。

さらに驚くべきことに、この分子は肺がん細胞に対しても強い作用を示しました。
N50 F2はがん細胞の増殖を止めるだけでなく、細胞自らを死に導く「アポトーシス」を誘発しました。
これは、がん治療において理想的なメカニズムのひとつです。
チームは、この効果が複数のシグナル伝達経路に同時に働きかけることで実現していると報告しています。
具体的には、がん細胞の生存や転移に関わるタンパク質の働きを抑えつつ、細胞死に関連する分子を活性化させることで、がん細胞を追い詰めるのです。
N50 F2は構造的にもユニークで、ブドウ糖とガラクトースを骨格とし、そこに硫酸基が多数付加された「硫酸化ガラクトグルカン」という形をしています。
この特殊な構造こそが、強力な生理活性の秘密だと考えられています。
もちろん、今回の結果はまだ試験管内での細胞実験にとどまっており、実際に人間の体内で同様の効果が得られるかどうかは、今後の動物実験や臨床試験での検証が必要です。
しかしチームは「この分子が新しい抗がん・抗炎症療法の候補となる可能性がある」と期待を寄せています。