うつ病リスクが高まる
本研究の対象となったのは、全国71自治体の65歳以上の高齢者1万7491人という非常に大規模な調査です。
調査では、住宅について暑さ・寒さを防げる環境であるかどうかを尋ね、抑うつ傾向については、専門的な「高齢者うつ尺度(GDS-15)」で心の状態を判定。
さらに年齢・性別・所得・運動習慣・認知機能など、うつに影響を与える他の要因を丁寧に統計的に調整しました。
その結果、暑さや寒さを十分に防げない住宅で暮らす人は、快適な家に住んでいる人と比べて、うつ傾向になるリスクが1.57倍高いことが判明したのです。
興味深いのは、「寒さ」だけでなく、「暑さ」もリスクに関わっていた点です。
そして北海道を除く全国の多くの地域でこの傾向が再現されていました。
つまり、「寒いから心がふさぐ」だけでなく、「暑さもメンタルにダメージを与える」ことが、科学的データで裏付けられたのです。
今回の研究結果は、「快適な住まい」は身体の健康だけでなく、心の健康=うつ病予防にも大きく役立つことを示しています。
「うつ病」というと遺伝やストレスばかりが話題になりますが、実は毎日を過ごす“住環境”も大きな影響を与えている可能性が高いのです。
もし自宅の暑さや寒さに困っているなら、断熱リフォームや、窓の工夫、カーテン・すき間テープなどで小さな改善から始めてみるのもいいかもしれません。