退職後のメンタルヘルスはどうなる?
退職は多くの人にとって人生の大きな転機です。
長年続けてきた仕事から離れることで、自分や家族のための時間が増えます。
一見すると夢のような時間ですが、社会的な役割を失ったり、生活リズムや経済面の変化から、心のバランスを崩すこともあります。
退職によって心の健康が改善する人もいれば、逆に落ち込む人もいるという指摘もあります。
また、退職直後の幸福感がどの程度続くのか、全員に当てはまるものなのかはよくわかっていませんでした。
そこで、エディンバラ大学の研究チームは、退職前から退職後までの心の健康の変化を、より細かく長期的に追跡する調査を行いました。
調査には、オランダのLISSパネルという国家レベルのパネル調査が使われました。
2007年から2023年までの17年間にわたり、退職を経験した1538人(平均退職年齢66~67歳)が対象となりました。
彼らの心の健康度は、「MHI-5」という質問表(うつ傾向や不安、幸福感などを数値化)で毎年評価されました。
また、参加者の月収(所得階層)、退職前の仕事の内容(肉体的・精神的負担)、性別、婚姻状況、学歴、退職年齢といった属性も記録されました。
そして退職前、退職した年、退職後の各時期でメンタルヘルスがどのように変化するかを明らかにしました。
さらに、所得階層ごとに分けてモデルを作成し、どのような人が大きな恩恵を受け、逆にリスクを抱えやすいのかも調べました。