空気の質の低下により「睡眠時無呼吸症候群も悪化する」と判明
分析の結果、PM10濃度が1単位増えるごとに、OSA患者の1時間あたりの呼吸が止まったり弱まったりする回数(AHI)が平均0.41回増えることが分かりました。
実際、PM10が少ない地域(1立方メートルあたり約16マイクログラム)に住む人ではOSAが軽症である傾向が強く、PM10が多い地域(約19マイクログラム)ではOSAが重症化しやすい傾向がありました。
この増加は、個人レベルで見ると小さな違いに思えるかもしれません。
しかし都市全体など多くの人に広がることを考えると、重症患者が増えて医療の負担も大きくなるため、決して小さな問題ではありません。
ちなみに、この「空気の汚れとOSAの重症度」の関係は、ヨーロッパ中どこでも同じように見られたわけではありませんでした。
パリ(フランス)、リスボン(ポルトガル)、アテネ(ギリシャ)などの都市では関係が強く出ましたが、他の都市では影響が弱かったり見られなかったりするケースもあったのです。
研究チームは、「この違いには、気候や空気の流れ、汚染の種類や量、医療機関でのOSAの診断体制の違いなど、さまざまな要素が影響している」と考えています。
しかし重要なのは、年齢や肥満、喫煙といった、これまで知られているリスクをすべて調整しても「空気中のPM10」という大気汚染が、OSAの重症度に独立して関係していた点です。
この知見は、私たちの健康や医療とも直接関係があります。
一方で、今回の研究では「大気汚染がOSAを悪化させる」メカニズムは分かっていません。
また、患者の家の中の空気や、日々の生活スタイル、遺伝など細かな違いは調べきれていない部分もあります。
今後は、「なぜ都市によって結果が違うのか」「どんな人が空気の汚れの影響を受けやすいのか」「大気汚染を減らすことで本当にOSAが良くなるのか」といった疑問に答えるため、さらなる研究が求められます。
健康には生活習慣だけでなく、いつも吸っている空気が大きく関係しています。
もし、いびきや睡眠時無呼吸症候群で悩んでいるなら、空気の質の改善を考慮しても良いかもしれません。