日本の伝統技術「金沢金箔」の薄さと輝きを生む謎を解明
日本の伝統技術「金沢金箔」の薄さと輝きを生む謎を解明 / Credit:Deformation mechanism behind the unique texture of Kanazawa gold leaf
physics

日本の伝統技術「金沢金箔」の薄さと輝きを生む謎を解明 (3/3)

2025.10.13 18:00:38 Monday

前ページ金沢金箔の中で起きていた奇妙な現象を電子顕微鏡が捉えた

<

1

2

3

>

和紙と槌が生んだ奇跡、次世代材料へのヒントに

和紙と槌が生んだ奇跡、次世代材料へのヒントに
和紙と槌が生んだ奇跡、次世代材料へのヒントに / Credit:Canva

今回の研究は、金沢金箔の「奇跡的な薄さと輝き」を支える職人技が、じつは科学的にも非常に理にかなっていることを明らかにしました。

伝統技術を科学でひも解いてみると、長年の経験から生まれた「和紙を挟んで叩き延ばす」という一見シンプルな工夫が、実は原子レベルの絶妙なコントロールを可能にしていたわけです。

まさに職人さんたちは、ずっと昔から無意識のうちにナノサイズの結晶を精密に制御する原子レベルのエンジニアリングを実践してきたとも言えるでしょう。

この発見の何がすごいかというと、まず伝統技術の確かな裏付けが得られたことです。

これまでは「なぜ金沢の金箔が特別か」と聞かれても、「長年の経験と勘」としか答えられませんでした。

でも、今回の研究で「和紙で温度を調整しながら常温で叩き続けることで、特殊なすべり現象が引き起こされている」と説明できるようになったのです。

これは、文化財修復で金箔を使用する際にも、信頼性がぐっと増しますし、職人技の伝承にも役立ちます。

また、材料科学という視点から見ると、さらに深い意味が見えてきます。

実は今回の金沢金箔で観察されたような特異なすべり現象は、普通の金属加工の常識からは外れていました。

通常なら、金属の結晶を揃えるには高温に熱して加工する必要がありますが、金沢の職人技は常温で同じ結果をもたらしたのです。

つまりこれは、薄さがある限界を超えると、結晶の内部で「普通では起きにくいすべり(変形)」が起きる可能性を示した、貴重な科学的発見でもあります。

この知見は、今後の材料開発にも大きな刺激となるでしょう。

例えば、電子デバイスやセンサー、さらには新しいタイプの装飾材料など、ナノサイズで結晶の向きを巧みに操ることができれば、これまでにない新素材が生まれるかもしれません。

金沢金箔は単なる美しい伝統工芸品としてだけでなく、「未来の技術革新へのヒント」としても新たな可能性を秘めています。

金沢金箔が教えてくれたのは「極限まで薄くなることで、金属の常識が通じなくなる」ということです。

薄さというのは、ただのサイズの問題ではなく、「科学の常識すら変えてしまう可能性」を秘めているわけで、これは金属材料の研究者にとっても、かなり衝撃的な事実だったと思います。

これからのナノ材料開発は、もしかすると「いかに薄くするか」という視点が、これまで以上に重要になってくるかもしれません。

<

1

2

3

>

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

0 / 1000

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

物理学のニュースphysics news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!