元A型の”ユニバーサル腎臓”がO型の体内で有望な結果を収める
しかし、理論上や体外の実験でうまくいっても、実際に人間の体の中で本当に同じように機能するかどうかは大きな課題でした。
研究チームはこの疑問を解決するため、家族の同意を得た脳死状態のレシピエントに、酵素でO型化したA型腎臓を移植するという人体モデルの実験に踏み切りました。
その結果は驚くべきものでした。
まず、移植後2日間は激しい免疫反応が全く見られず、腎臓は正常に機能し続けました。
通常懸念される移植直後の激しい反応は観察されなかったことから、従来の不適合移植で想定される反応を回避できたことを示しています。
しかし3日目になると、腎臓の表面に再びA型抗原が少しずつ現れ始め、それに伴って軽度の免疫反応も観察されました。
それでもダメージは従来の型違い移植よりはるかに小さく、体が腎臓を受け入れようとする兆候も確認されました。
これは、将来的には長期間にわたり安定した耐性が得られる可能性も示唆しています。
もちろん、抗原が再び現れてしまう理由や、それをどう抑制するか、さらには長期にわたる機能維持と安全性の検証など、今後解決すべき課題は多く残されています。
また、実際の患者さんへの応用にはさらなる臨床試験や規制上の整備も必要となります。
それでも、「臓器そのものを誰にでも適合させる」という今回のアプローチは、腎臓移植を待つ世界中の患者に新たな希望をもたらし、移植医療の未来を根本から変える大きな一歩になると期待されています。
「ユニバーサル腎臓」の実現に向けて、今後も多くの取り組みが実施されていくのでしょう。