音楽は「ただの気休め」ではなかった
研究チームは今回、「音楽が精神的疲労に本当に効くのか?」を客観的に証明するため、健康な大学生30名を対象に次のような実験を行いました。
まず全員に「ストループ課題」という認知負荷の高いテストを30分間実施。
これは例えば、「赤」という単語が青いインクで書かれていた場合、「インクの色(青)」を答えるという、集中力と注意力が試される心理テストです。
この30分の作業だけで、ほぼ全員が「頭が重い」「やる気が出ない」といった強い精神的疲労を感じるようになりました。
主観的な疲労感だけでなく、脳波(EEG)を測定した結果も、脳が明らかに「疲労モード」になっていることを示していました。
ここから参加者は2つのグループに分かれます。
・音楽群:リラックスできる中国の器楽曲(歌詞なし)を20分間聴く
・コントロール群:同じ20分間を静かな部屋で何もせず休む
その後、再び疲労感と脳波を測定し、両者の回復度を比較したのです。
すると驚くべきことに、「リラックス音楽を聴いたグループ」は「ただ休んだグループ」と比べて、主観的な疲労感が大きく減少していました。
さらに脳波解析でも、「音楽群」は脳の覚醒度を示す“アルファピーク周波数”が回復傾向を示し、疲労のサインであるスロー波(デルタ波・シータ波・アルファ波)のパワーが大きく低下。
一方、コントロール群ではこうした変化がほとんど見られなかったのです。