点鼻薬により、老化したマウスの脳で機能が改善する
これは人間でいえばおよそ60歳前後に相当すると考えられる時期です。
つまり、若い脳ではなく、すでに老化が進んだ脳に対して効果があるかどうかを調べたことになります。
マウスには、2週間おきに2回、細胞外小胞を鼻から投与しました。
その後、記憶や脳の状態を詳しく調べています。
まず注目されたのは、脳の炎症がどう変わったかです。
その結果、脳の炎症を強める仕組みの働きが弱まっていました。
また、炎症を起こしやすい状態になっていたミクログリアの集まりも減っていました。
これは、老化した脳で続いていた炎症が弱まったことを示しています。
さらに、脳の細胞にかかる酸化ストレスも減っていました。
酸化ストレスは、細胞が傷つく大きな原因の一つですが、老化した脳では、この酸化ストレスが増えやすく、神経細胞の働きにも悪影響を与えます。
今回の処置では、その負担が軽くなっていたのです。
加えて、ミトコンドリアに関係する遺伝子の働きも改善していました。
ミトコンドリアは、細胞のエネルギーを生み出す場所ですが、脳の細胞は大量のエネルギーを必要とするため、ここが弱ると情報処理や記憶の働きも落ちやすくなります。
つまり、これらの結果は、炎症が下がっただけでなく、脳細胞がエネルギーを作る力も立て直される方向に動いたことを示しています。
こうした変化は、行動の面でも確かめられました。
研究チームは、物体を覚えられるかどうか、そして物の位置の変化に気づけるかどうかを調べるテストを行いました。
その結果、点鼻投与を受けたマウスでは、こうした記憶に関わる成績が改善していました。
つまり、脳内の分子や細胞の変化だけでなく、実際の認知機能にもよい変化が現れたのです。
今回の研究が示しているのは、加齢による脳の変化の少なくとも一部は、炎症を抑えることで回復に近づける可能性があるということです。
ただし、ここで注意も必要です。
今回の結果はあくまでマウスで得られたものです。
人間でも同じような効果が出るかどうかは、まだわかっていません。
また、安全性や効果の持続期間、どのくらいの量をどの頻度で投与すべきかも、今後詳しく調べる必要があります。
それでも、手術をせずに脳へ作用しうる方法として、鼻からの投与が有望であることを示した意義は小さくありません。
今後、より長期の観察やヒトでの検証が進めば、加齢による認知機能低下や神経変性疾患の新しい対策につながる可能性があります。




















































