大きすぎて見落とされた? 腸内細菌研究に潜む盲点
細菌を調べるための方法そのものが、この「大物」を見えにくくしていたのでしょうか?
著者たちは、DNAによる分類と、生き物の姿を調べる研究の間に隔たりがあると指摘しています。
以前のヒトの腸内データにも、この仲間のDNAは記録されていました。
それでも、そのDNAの持ち主が巨大な細菌である可能性は、十分に検討されていなかったのです。[1]
しかも、姿を捉える前に、調査対象からこぼれてしまう可能性もあります。
便を調べる際には、大きなごみを取り除くため、試料をこしたり、回転させて粒子を沈めたりすることがあります。
著者たちは、その処理で巨大な細胞まで一緒に取り除かれていた可能性を挙げています。
大きいから見つけやすいどころか、大きすぎるから見落とすのかもしれません。[1]
姿の確認は、DNAの数字を読み解くうえでも大切です。
魚で知られる巨大な仲間には、1個の細胞が遺伝情報のコピーを何万部も持つものがいます。
そのため、少ない細胞から大量のDNAが読み取られることがあります。
少数の大物が、DNAのデータでは大勢に見えることもありうるのです。
では、数が少なければ、お腹の中での存在感も小さいのでしょうか。
本当に巨大な細胞なら、数が少なくても、その集まりが占める体積は大きくなるかもしれません。[1]
DNAの数字から腸内での暮らしを読み解くには、持ち主の大きさや数を確かめる必要があるのです。
その暮らしを探るもう一つの手がかりが、年齢や健康状態によってDNAの割合が違ったという結果です。
生後間もない赤ちゃんの腸では、細菌たちの集まりが形作られている途中です。
病気に伴って腸内の栄養や、ほかの細菌との競争が変わる場合もあります。
著者たちは、こうした変化が、この仲間にとって暮らしやすい条件を生む可能性を考えています。[1]
つまり、病気の「犯人」とは限らず、変化した環境に居場所を見つける住人なのかもしれません。
どんな条件で現れやすいのかがわかれば、腸内環境の変化を知らせる目印として役立つ可能性もあります。
著者たちは、DNAの解析と、細胞の姿を直接調べる方法を組み合わせることを求めています。[1]
DNAの持ち主を顕微鏡で捉えられれば、大きさや数を手がかりに、お腹の中での存在感を調べられます。
私たちのお腹には、名前は名簿に載っていても、まだ顔を見ていない住人がいるのかもしれません。
参考文献
[1] Lyu, Y. et al. Giant bacteria in gut microbiomes. bioRxiv
[2] Cornell Chronicle. Giant bacterium powers itself with unique processes.
[3] Miyake, S., Ngugi, D. K. & Stingl, U. Phylogenetic Diversity, Distribution, and Cophylogeny of Giant Bacteria (Epulopiscium) with their Surgeonfish Hosts in the Red Sea. Frontiers in Microbiology 7, 285 (2016).




