絶対零度の近くでは、別の物差しが限界を決める
ただし、この下限がそのまま当てはまるのは、温度が絶対零度から十分に離れている場合です。
絶対零度の近くでは、物がとれる最も低いエネルギーの状態(基底状態)と、その1つ上の状態とのエネルギー差が主役になります。
このエネルギー差が、温度の代わりに最短時間を決めるのです。
最も低い状態まで冷やすだけの装置なら、最短時間の目安は ℏ をこのエネルギー差で割った値になります。
これは、高い温度での下限よりもゆるい縛りです。
この目安は、条件をゆっくり変えて物を目的の状態へ導く「断熱的」なやり方の、最適な手順とも合っていました。
では、この下限は、実際に迫ることのできる壁なのでしょうか?
研究チームは、フェルミオン(電子の仲間にあたる種類の粒子)1個を、同じ種類の粒子がたくさん集まった「浴」につなぐ模型で確かめました。
まず、エネルギーの式が違う2通りの粒子を、同じ初期状態から、同じ手順で同時に熱平衡へ運ぶ場合を考えます。
このとき、下限より短い時間のうちに一方を目標の状態に近づけすぎると、もう一方は目標から離れざるをえません。
粒子のエネルギーの段差を0とkBTに選んだ例では、こうした「入れない範囲」は始めの時点で最も広く、時間とともに狭まり、プランキアン時間の半分ほどで消えました。
そのうえで、粒子と浴をつなぐ強さを、時間とともに弱めていく形で変えて計算しました。
すると粒子の状態は、入れない範囲を避けながら、限界の近くまで速く熱平衡に近づいたのです。
うまく調整した装置なら、この下限にかなり迫れることが、模型の上で示されたことになります。
一方で、まだ分かっていないことも残っています。
たくさんの粒子からなる系で、量子もつれ(粒子どうしの状態が切り離せなくなる量子特有のつながり)がこの下限にどう関わるのか、系がとても大きくなるとどうなるのかは、今回の範囲の外です。
現実の熱浴がどこまでこの下限に近づけるのかも、これからの課題とされています。
また研究チームは、この下限が当てはまる範囲で、温度が低いほど下限が長くなる性質は、絶対零度にまつわる「熱力学第三法則」を思わせると述べています。
ウィーン工科大学のアルベルト・ロランディさんは、この方法から熱力学の第二法則や第三法則の限界について何が分かるか、いま調べていると話しています。
冷蔵庫がどれほど高性能でも、エネルギーの段差が温度に比べて小さい、さまざまなビールをどれも冷やせる装置である限り、温度と2つの定数で決まる時間より速くは冷やせないのです。
冷蔵庫の扉を何度開けて確かめても相手は量子力学なので、ここはつまみでも作りながら大人しく待つのが賢明でしょう。
ここからは、熱力学的平衡をもっと知りたい人へ
熱平衡とは、外と熱や物のやりとりをしない物を長く放っておいた時に行き着く、見た目にはもう変化が起きない状態です

熱平衡は、物の中に熱などの流れがどこにも無くなり、落ち着いた状態のことです。
外と熱も力も物質もやりとりしない物は、十分に長く放っておけば、必ずこの状態になります。
物理学では、温度は大きな物の熱平衡の状態を表す量だとされています。
熱平衡どうしの関係には、AとB、BとCがそれぞれ熱平衡にあればAとCも熱平衡にある、という決まりがあり、熱力学の第0法則と呼ばれています。
なお、物どうしが押し合ったり物質を出し入れしたりできる場合は、温度が等しいだけでなく、力がつり合うことも熱平衡の条件になります。
この言葉は地球全体の話でも使われ、天文学や地球物理学では、地球と大気が太陽から受ける電磁波の放射と、地球と大気が出す放射とのつり合いを熱平衡と呼びます。
体温の熱平衡を考える例では、人が1日に使うエネルギーを2300kcalとすると、仕事に回るのはせいぜい20%で、大部分は熱になります。





氷水に缶をつけ込んでくるくる回すと早く冷えるとかそういう話かと思ったけど違いました。
ハイゼンベルクの不確定性原理は
粒子を観測するためには、電磁波をより強く当てて、粒子の光と影を強く強調して観測するべきだが、その時に粒子は電磁波に押されて更に運動し量子的にブレてしまうので、観測限界がある
これを量子情報学の数式で変形させていくと
ある粒子を観測するためには、温度をより下げて、粒子の運動をより止め、粒子を正確に観測するべきだが、その時に粒子は温度低下によって更に量子的に正確な情報量が増え、粒子の持つ正確な情報を精密に計測するための時間が必要になるため、温度低下速度の限界が出てくる