・イギリスのカール・マーティン氏が自宅の歯ブラシ立てとして使っていた陶器は、4000年前に栄えたインダス文明の貴重な遺物と判明
・陶器に描かれた幾何学模様や動物の絵は、インダスの人々が交易の際に商品に記していた文字だった
・たった4ポンドで購入した陶器は、その後オークションにて20倍の80ポンドもの高値がついた
謎の動物が描かれた、一見ただの古びた陶器。
これは5年間もの間、イギリス在住のカール・マーティン氏の歯ブラシ立てとして洗面所に鎮座していたものです。実は最近、この古びた歯ブラシ立てがおよそ4000年も前に栄えていたインダス文明の貴重な遺物であったことが判明しました。一体どういう経緯なのでしょうか。
Derbyshire car boot sale pot – used for toothbrushes – turns out to be 4,000-year-old ancient antiquity
https://hansonsauctioneers.co.uk/blog/2018/11/
インダス文明は、紀元前2600年から紀元前1900年頃に、現在のインド・パキスタン・アフガニスタン地方を流れるインダス川流域に栄えた古代文明で、「モヘンジョ=ダロ」遺跡があることでも有名です。
マーティン氏は、イギリスにあるハンソン・オークションに鑑定人として勤めており、今回の陶器は「カー・ブート・セール」とよばれる地元の市場で手にいれたものでした。「カー・ブート・セール」とは、イギリスでは馴染みのフリーマーケットで、各人が車にいくつものアイテムを詰んで持ち寄り、売りに出すことからその名前が付いています。
マーティン氏はそこで、10センチほどの小さな粘土製の陶器に一目惚れ。陶器の側面には、細かな幾何学模様とレイヨウと呼ばれるウシ科の動物の絵が施されており、出処はまったく謎でしたが、たったの4ポンド(およそ600円程度)で購入することができました。そしてこの小さな陶器は、マーティン氏の自宅にある洗面所にて数年のあいだ歯ブラシ立てとして活躍することになるのです。
しかしある日、マーティン氏が同僚とワゴン車に積まれた競売品を下ろしていたところ、洗面所に置いてある陶器とそっくりな陶器を見つけたのです。側面には同じように、幾何学模様とレイヨウの動物が描かれていました。マーティン氏は急いで自宅にある陶器をハンソン・オークションの会長であるジェームズ・シーモア・ブレンシュリー氏に鑑定を頼みました。すると、それを見たブレンシュリー氏は、すぐにその容器に描かれている模様のパターンがインダス文明の遺物に特有のものであることに気づいたのです。
ブレンシュリー氏によると、この幾何学模様や絵は、交易の際の商品交換のシンボルとして使われていました。また遺物に刻み込まれたインダス文字は人類が生み出した初期の文字として知られていますが、解読が難しく、未だに不明な点が多い文字です。
ブレンシュリー氏は、インダス文明の貴重な陶器が、アフガニスタン地方に行ったイギリス人観光客によって持ちこまれたのではないかと推測しています。それを知らされたマーティン氏は、洗面所の陶器を非常に気に入っていたのですが、結局オークションに出すことにしました。すると、今度は80ポンド(およそ100ドルなので、だいだい1万2千円)の高値がつき、購入時から20倍にも跳ね上がったのです。
マーティン氏は購入した際、それがまさか古代文明の遺物であるとは思いもしなかったそうで、キリストが生まれる2000年も前に作られたものが、古びた車の中に埋もれていたことに驚きを隠せていません。しかし、真実がわかったことで「このまま歯磨き立てとして使っていたらバチが当たるところだった」とホッとしているご様子。それでも知らなかったとはいえ、5年間も貴重な遺物を日常使いしていたわけですから、多少の罪悪感は察せられるところです。
今回は幸運にも発見することができましたが、もしかしたら皆さんの自宅にも貴重な文明の遺物があるかもしれません。得体の知れない貰いものなどは、ぜひチェックしてみてくださいね!
via: atlasobscura , dailymail / translated & text by くらのすけ