貪る者=サソリ 火=刺された痛み
研究チームによると、「貪る者」が吐く火に苦しむ人への治療には、「貪る者」の血が用いられるそうです。血を飲ませるのか、身体に塗りつけるのかは、よく分かっていません。文字の側には、ムカデやサソリ、魚のようなさまざまな生き物の絵が並んでいます。
絵は、化粧道具入れの2つの面に描かれていました。もともと中に化粧品が入っていた箱を再利用して、碑文を彫るために使ったのではないかと考えられています。
研究チームは、「貪る者」とは実際はムカデやサソリのことで、「火」はその針で刺された時の痛みを指しているのではないかと推測しています。
事実、ズィンジルリで発掘作業にあたる考古学者にとって、サソリは大きな悩みの種。発掘の際は、常に靴や鞄にサソリが付着していないかを確認する必要があります。
といっても、この辺りに生息するサソリのほとんどはそれほど危険な毒は持っていませんが」と、発掘チームの共同ディレクターであるヴァージニア・ヘルマン氏は語っています。
分析によると、発見された碑文は紀元前850〜800年頃にかけて作成されたものとのこと。これまで発見されたアラム語の碑文としては最古のものです。
碑文が保管されていた建物は、それから1世紀以上後の、紀元前8世紀後半〜7世紀にかけて作られた寺院のような建造物だと推測されています。
このことは、この碑文が長期間保存が必要とされるような重要性を備えていたことを示唆しているのです。
古代都市サム・アルは、紀元前720年頃からアッシリアの支配下に置かれましたが、その衰退とともに衰えました。「貪る者」という物々しい呼び名からはちょっと想像しにくいほどの素朴さを湛えた碑文のイラストからは、古代オリエントの人々の息吹が立ち昇ってくるようです。
referenced: livescience / written by まりえってぃ / edited by Nazology staff