なぜそこまでして動物の乳を飲むのか?
私たちがラクターゼ活性維持の特性を獲得してまで動物の乳を飲むのには、理由があります。まずは何よりも、動物の乳を新しい栄養源とすることで、飢餓のリスクを減らせるというメリットが挙げられます。
ですが、巷にさまざまな食料が存在する中、ただ1つの食料、しかも他の食料とはまったく異なる種類の食料がそれほど重要だとは、不思議です。

実は、ラクターゼ活性維持の特性を持っていなくても、ラクトースの摂取量が一定量以下であれば、具合が悪くなることはありません。また、バター、ヨーグルト、クリーム、チーズの加工品にすることで、ラクトースの量を減らすこともできます。チェダーチーズなどのハード系のチーズやバターは、ラクトースの含有量がミルクの10パーセント未満に抑えられます。
チーズが発明されたのも、そう遠い昔の話ではありません。2018年、現在のクロアチアで発掘された陶器の破片に、脂肪酸が付着しているのが発見されました。陶器は、チーズの製造工程の一つである、乳清とカードの分離に使用されていた可能性があります。もしそうであれば、チーズの製造が始まったのは、約7,200年前の南ヨーロッパだったということになります。これは、人々の間にラクターゼ活性維持の特性が広まるずっと前です。
ラクトースを上手く消化できなかった時代、人々は加工の手間を掛けてでも、動物の乳を摂取しようと努めました。