ラクターゼ活性維持の特性を獲得しなかった人々
ラクターゼ活性維持の特性を誰が獲得し、誰が獲得しなかったかには、明らかなパターンが存在します。牧畜家は獲得しましたが、狩猟・採集、農業で生計を立てた人々は獲得しませんでした。動物の乳が手に入らない人々には、「動物の乳を飲まなければならない」という進化上のプレッシャーが無かったからです。ですが、牧畜家の中にも、ラクターゼ活性維持の特性を獲得しなかった者がいました。
モンゴルの遊牧民は、栄養源として動物の乳に大きく依存しているにもかかわらず、ラクターゼ活性維持の特性の獲得率が極めて低いことで知られています。ヨーロッパや西アジアで広まったこの特性が、東アジアに拡大しても何ら不思議はないなのに、どういうわけかそうはなりませんでした。
たまたま運悪く、モンゴルの人々は進化の爪弾きにされただけかもしれません。でも、彼らは動物の乳を発酵させる技術を生み出しました。ラクトースを消化できない障害を、文化的に順応することで克服してきたのです。