他人がイライラしている場面に遭遇しても、「少し我慢するだけ」と軽く考えていませんか?
近年の研究により、ストレスや感情が “伝染” することが明らかになってきました。ストレスが原因の脳の変化は、PTSDやうつ病を含む多くの精神障害を引き起こす原因となり得ます。
カナダ、カルガリー大学のジェイディープ・ベインズ博士らのマウスを使った最新研究によると、他人のストレスは伝染するだけでなく、自分の脳を細胞レベルで変えてしまうといった衝撃的な事実が発表されました。
今後はストレスまみれな人とは距離を置いたほうが無難かもしれません。
https://www.nature.com/articles/s41593-017-0044-6
実験では、ペアのマウス(オス・メス)が使用されました。マウスを一匹ペアから引き離し、ストレスを与えた後でパートナーのもとに戻しました。その後、脳へのストレス反応をコントロールしている “CRHニューロン” と呼ばれる細胞群を調べた結果、ストレスを与えたマウスだけでなく、そのパートナーも同じように脳が変化していることがわかりました。
次に研究チームは、「光遺伝学」を使ったアプローチに取り組みました。
これにより、光を用いることでCRHニューロンを意図的に操ることができます。マウスがストレスを受けたとき、CRHニューロンを活動させなかった場合は、脳の変化は起こりませんでした。
ストレスを受けたマウスとそのパートナーが交流する際に、パートナーの CRHニューロンを活動させなかった場合も同様に、ストレスは伝染しませんでした。しかし驚くべきことに、実際にストレスを受けたマウスとそうでないパートナーのどちらか一方の CRHニューロンを活動させると、両者の脳は変化したのです。
マウスは通常、CRHニューロンを活性化させることでパートナーに「警告フェロモン」を発します。「警告フェロモン」を察知したパートナーは、群れの他の個体に同じフェロモンを発します。この伝達は、多くの種が集団として活動していくうえで重要なメカニズムです。
ベインズ博士はこれらの発見が人間にも当てはまることを示唆し、「無意識的にせよ、私たちは簡単に感情やストレスを伝染させてしまいます。しかし逆に、人の気持ちを積極的に汲み取ってあげることは社会的な絆を育んでいく上で重要でもあります」と語っています。
「ストレスが伝染する」と聞くとネガティブですが、周囲の人がストレスに悩む人に気づいてあげるための優しい仕組みでもあるかもしれませんね。
via: sciencedaily/ translated & text by Nazology staff
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