■流行に逆らう「ヒップスター」は、結局ヒップスター同士で同じ格好になってしまう
■同じ格好になり、それがまた流行となる現象を「ヒップスターのパラドックス」と呼ぶ
■ヒップスターは将来的に自分たちが逆らうことになる流行を自らが作っている
流行っているものには意地でも食いつかない…。そんな人に心当たりはありますか?
アメリカでは、都会で流行の最先端をゆくデジタル世代の若者をhipstar(ヒップスター)と呼びます。そのヒップスターの男性が、科学技術雑誌であるMITテクノロジーレビューを訴えました。理由は「ヒップスターは結局同じ格好をする」という内容の記事に、自分の写真を無断で使用したというものでした。
SNS上にアップした男性の写真とMITの写真は瓜二つだったようで、両者とも、あご髭にビーニー帽を被り、同じフランネルのシャツを身につけています。
しかし、2つの写真の男性はまったくの別人。MITテクノロジーレビュー編集者のギデオン・リッチフィールド氏によると、写真は現在流行している最先端の格好に近いものをストックの中から使っていただけなのです。
まさに「ヒップスターは同じ格好になる」というMITの術中にハマった事件となりました。しかし、なぜ同じになってしまうのでしょうか。
「ヒップスターのパラドックス」とは?
この騒動によって、ブランダイス大学の数学者であるジョナサン・トゥブール氏が2014年に発表した「ヒップスターのパラドックス」についての論文が再び取り上げられました。
論文の詳細は、今年の2月21日付けで「arXiv」上に再発表されています。
https://arxiv.org/abs/1410.8001
トゥブール氏が唱えた「ヒップスターのパラドックス」とは、主流となる文化と反対を行くはずのヒップスターが、彼らの間で同じ格好になってしまうという、まさに今回の事件と同じものでした。
同氏は、この理由を解明するために、流行の現れをモデル化して、2つの異なるグループに分けました。1つは、大多数の流行に従った格好をする「メインストリーム派」で、もう1つは、大多数の反対を行く「ヒップスター派」です。
以下の画像がそのモデルとなります。
上記画像の一番左下のモデルを見てください。バーコードの上半分が「メインストリーム」、下半分が「ヒップスター」の流行の動きです。この2つの流行の動き(黒と白のライン)が見事に交互になっています。