社会における宗教の「機能的役割」
サベジ氏らの調査結果から、世界史全体を通じて、宗教が「社会を安定させる・人々に強力を促す」といった機能的役割を果たしていることが分かります。狩猟社会のようなごく小さな共同体の中では、人々はみな顔見知りで、行動をお互いに監視しあうことができます。
ですが、共同体の規模が大きくなると、その「匿名性」が増すため、誰を信用すべきかが分かりにくくなります。そこで登場するのが、すべてを支配する全知全能の神への信仰です。強力な監視者のもと、人々の倫理観が保たれ、社会の安定が維持されるというわけです。宗教と社会の因果関係が、いかに深く、地域や時代に関係なく普遍的であるかが分かりますね。
サベジ氏の説は説得力がありますが、その一方で、「道徳的な神への信仰が生まれると、社会がさらに複雑になる」と考えることも可能ではないでしょうか。結局のところ、「鶏が先か、卵が先か」という話になってしまいますが、宗教と社会が密接に結びつきながら相互作用を繰り返してきたことは確かです。