Point
■人はバッド・ニュースを伝えてきた相手を無意識に嫌ってしまう傾向がある
■これは相手にまったく非がない場合においても変わらず、ニュースが予想だにしないタイミングで伝えられた場合や、理不尽なものであった場合にはその傾向は強まる
■これは両者にとって良くないことであり、私たちは意識的にこのバイアスを排除すべきである
「ボス…実は悪い報告が…」
気まずそうに話す部下からバッド・ニュース聞いた悪の組織のトップは、「そうか…よく話してくれた」と語りかけ、安心した部下の顔を確認した直後に始末してしまったりする。
こんなベタなシーンは映画でしか観ることができないが、実はこれと同じことが実世界でも起こっている。「Experimental Psychology」に掲載された新たな研究が、私たちは悪いニュースを運んできた人を嫌いになりがちであることを示してみせた。
Shooting the messenger.
バッド・ニュース伝えるべからず?
ハーバード大学の研究チームは、参加者に実際にバッド・ニュースやグッド・ニュースを聞いてもらったり、その場面を想像してもらう11の実験をおこなった。
最初の実験は次の手順でおこなわれた。参加者は研究アシスタントが引き当てる数字を奇数か偶数か予想し、当たれば2ドルがもらえる。そして参加者に対し、予想が当たっていたかどうかを伝える「メッセンジャー」の役を指定し、2ドルをゲットできたがどうかを伝えてもらった。
すると、まったくの無実なはずのそのメッセンジャーは、2ドルをゲットできなかった人たちから「好ましくない人格の持ち主」であると評価される傾向があったことが明らかになったのだ。
続く実験では、参加者に病院でのシチュエーションを想像してもらった。それは、自らがガンに侵されているかどうかを看護師から聞くといった場面であり、看護師は2人いる。1人からは参加者がガンであるとのバッド・ニュースがもたらされるが、もう1人はただ次の診療のアポイント調整のためにそこにいるだけだ。
すると参加者たちは、バッド・ニュースを届けた「メッセンジャー」である看護師にのみ低い評価を与え、もう片方の看護師にその影響が及んでいないことが分かった。
さらに研究チームは、バッド・ニュースが思いがけないタイミングで知らされたり、理不尽なものであったときにはその効果が強まることを発見した。
そこでは、参加者に空港で乗る予定だった飛行機が3時間遅延しているといった1シーンを想像してもらった。そして参加者の半分には、空港のスタッフからスケジュールどおりの順番で飛行機が飛ぶことを告げられ、残りの半数の参加者には、別の飛行機がその枠に急きょ割り当てられたことが告げられた。
するとこのシチュエーションにおいては、理不尽な内容を告げられた後者の参加者の方が、空港のスタッフに対して特に低い評価を与えていたことが判明したのだった。