Point
■世界初となったブラックホール撮影は347人もの科学者が参加したチームにより成し遂げられた
■この偉業が、今週木曜に科学のアカデミー賞とも言われる「基礎物理学ブレイクスルー賞」を受賞した
■この受賞により、チームは300万ドル(3億2100万円)の賞金を獲得
国際プロジェクト 『イベント・ホライズン・テレスコープ (Event Horizon Telescope; EHT)』は、2019年4月10日にブラックホールシャドウの撮影に世界で初めて成功しました。
この功績を表彰して、プロジェクトチーム「EHT Collaboration」は今週木曜、科学のアカデミー賞と言われる「基礎物理学ブレイクスルー賞」を受賞し、賞金300万ドル(3億2100万円)を獲得しました。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのShep Doelman氏が率いるこのチームは、総勢347人にも科学者が参画しており、世界の8つの電波望遠鏡を使い10年近くを費やして5300万光年離れたM87*(アスタリスクはブラックホールを示す)をターゲットとして、撮影を試みてきました。
今回の受賞は、そんな努力が実を結び、これまでにない分解能で、史上初めてブラックホールのシルエットを観測することに成功し、天体の理論的予想を確認したことに対して送られています。
超大質量ブラックホールというと、天の川銀河の中心、約2万6千光年の場所にも「いて座A*」がありますが、これは現在はあまり活発な活動をしておらず、また銀河中心なので、塵や他の天体によるノイズがかなり入ってしまいます。
もやっとした画像ではありますが、5300万光年も離れたブラックホールの降着円盤の輝きを画像化したというのは、途方も無い偉業なのです。
ブラックホールの降着円盤は理論的には予想されている存在でしたが、観測で確認されたことはありませんでした。活動的なブラックホールは吸い込んだ物質が大量にその周囲を公転していて、激しく摩擦を起こし熱を持って輝いています。
ブラックホールを見える形で観測することが出来たことで、この研究では、事象の地平面の半径(シュバルツシルト半径)やブラックホール自体の質量も直接計算することに成功しています。
また、降着円盤の回転が映像から確認できる点も大きな特徴です。画像の明るいオレンジの部分は地球側へ向かって回転している場所であり、暗い部分は地球から離れるように回転している場所です。これは光のドップラー効果によるものです。
ブレイクスルー賞は世界のトップサイエンティストを表彰するために、シリコンバレーの起業家たちにより創設されて、8年目を迎えます。
天文分野以外でも、生命科学や数学のカテゴリーで受賞者がおり、それぞれに賞金300万ドルが授与されています。
授賞式は11月3日にカリフォルニア州マウンテンビューのNASAエイムズ研究センターで開かれます。
しかし、これだけ大勢のチームで成し遂げた成果となると、多額の賞金も使い途に困ってしまいそうですね。天体観測の設備増強のために使われるのか、みんなの飲み代に消えるのか…。いずれにしても、さらなる科学発展の礎になるのでしょう。