Point
■2019年のノーベル化学賞に、リチウムイオン電池の開発に貢献した旭化成名誉フェロー吉野彰氏を含む3人の科学者の授与が決まった
■リチウムイオン電池は、小型・軽量化ができ、かつ容量の大きい充電可能な電池で、現代のワイヤレス機器には欠かせない技術だ
■リチウムはアルカリ金属に属し、発熱・爆発などの危険性が高かった。吉野氏は純粋なリチウムを除去して、電池の危険性を大幅に減少させた
2019年のノーベル化学賞に、リチウムイオン電池(LIB)の開発に貢献した3人の科学者、テキサス大学John B. Goodenough氏、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校M. Stanley Whittingham氏、旭化成株式会社および名城大学の吉野彰氏が選ばれました。
LIBは、小型軽量化が可能で、容量が大きく、また従来のバッテリーと異なり電気を使い切らないまま継ぎ足しで充電を繰り返せるという非常に優れた性能を持っています。
耳に引っ掛けるだけの小型ワイヤレスイヤフォンや、PC並みの性能を持つ薄いスマートフォンが、独立した状態で8時間以上も連続稼働可能なのもLIBが実用化されたおかげなのです。
今回のノーベル化学賞の中核となるリチウムイオン電池はどのように実用化されたのか? 今回の受賞者たちが果たした功績とは何なのか? 解説していきましょう。
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2019/summary/
何がすごいの? リチウムイオン二次電池
電池は使い捨てを一次電池、充電して再利用可能なものを二次電池と呼びます。今回話題のLIBは充電可能なので、正式名称は「リチウムイオン二次電池」といいます。
ほんの20数年前まで、小型携帯機器のバッテリーは非常に使いづらいものでした。
30歳以上の人なら誰しも経験があるかと思いますが、昔のバッテリーにはメモリー効果と呼ばれる現象がありました。これはバッテリーの容量を使い切らずに充電を行うと、利用可能な電気容量が残量分減ってしまうという困った性質です。
メモリー効果のメカニズムは未だにはっきりわかっていません。しかし、LIBはこのメモリー効果を起こさないのです。
また、昔の二次電池は溶媒が水でした。水は1.5V以上の電圧がかかると電気分解してしまうため、それ以上の電力が得られませんでしたが、LIBは非水系電解液を使うことで4V以上の高い起電力と容量を確保できています。