Point
■花粉飛散量と犯罪報告数を毎日比較していた研究者が、花粉の多い日は暴力犯罪が減ることを発見した
■面白いことに花粉の影響は暴力犯罪のみに現れていて、財産犯罪などには変化が見られなかった
■これは単に花粉症の疲労が犯罪する気をなくしているだけだという意見もあるが、計画的な犯行には影響しない点は興味深い
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/38877
花粉症に苦しめられている人は多いですが、ひょっとしたらみんなの嫌われ者「花粉」にもいい効果があるかもしれないという研究が発表されました。
なんと花粉量が増えると、暴力犯罪が減るというのです。
化学的な汚染物質が脳に与える影響を調査した研究は数あれど、花粉と犯罪の影響を報告する研究は例がありません。
果たして、花粉は人の暴力性を抑えるような平和的な効能があるんでしょうか?
この研究は、米国ペンシルベニア大学の研究者Aaron Chalfin氏を筆頭としたチームより発表され、医療経済学研究の学術誌『Journal of Health Economics』に掲載されています。
https://doi.org/10.1016/j.jhealeco.2019.102230
花粉と犯罪の関連性
この研究では、米国17都市の地域ごとの花粉飛散量と毎日の犯罪報告数の比較を行いました。
そもそもなぜそんなものを比較したのかはともかく、その結果、花粉の量が異常に多い日には、暴力犯罪の発生数が約4%減っていたことが明らかにされました。
4%の減少というのは大した値には聞こえないかもしれません。しかし、この変化量は馬鹿にできないものがあります。米国の警察では、犯罪件数が10%増加すると、刑務所収容人数を20%増加する必要があるといいます。
この研究では対象とする都市の特徴、気象特性、なども考慮しており、また、ニューヨーク市の個人レベルのデータなども使って詳細な検証を行って要因分析をしています。
それによると、花粉量が高いとき、親密なパートナーや家族間で起こるような身内の暴力犯罪が特に大きな減少を見せていることを発見しました。
ただ、この研究は花粉の量と犯罪件数の単純な相関関係を示しているに過ぎないため、花粉症による「健康ショック」が疲労を感じさせ、暴力行為を行うための気力を奪っているという証拠を得たに過ぎないと言われています。
花粉と犯罪を関連付ける研究は、一見バカバカしいものにも思えます。しかし、アレルギーが人の行動や幸福に与える影響は無視できないものがあります。別の研究では、季節性のアレルギーは人の気分に影響を与え、うつ病や不安になりやすい原因を作り、自殺に繋がる可能性もあると言います。
短期的な影響を見ても、花粉症は人の精神機能の低下や、記憶力、推理力、計算力の低下を引き起こします。
また、花粉の多い日では人の活動に影響があり、研究者たちの調査によると市営レンタル自転車の利用数が8%減少していたといいます。
このことから、論文が示すメカニズムは、人々がより疲弊し無気力になれば、人が突発的に怒る可能性も低くなるということのようです。
そして、この論文はもう一つ面白い考察を行っています。花粉の飛散量は暴力犯罪のみと関連していて、財産犯罪を見た場合に花粉量との関連性は見られなかったというのです。
研究者たちは、このことから財産犯罪のような計画を必要とする犯罪は、それを遂行するための意欲が永続的で、体調や環境による変化で断念されることが少ないと考えられます。逆に暴力犯罪は、突発的であり一時的な体調変化、健康ショックの影響で止められる場合が多いと語っています。
暴力犯罪は、割と簡単な要因から一気に減らしていくことが可能なのかもしれません。だからといって、花粉を増やすのはゴメンですけどね。