- 耳に入った水を抜く方法として、頭を振ることは脳にダメージを与える可能性があると判明(特に小さな子供)
- 実験の結果、水を抜くために必要な頭の振りの加速度は、重力の約10倍もかかっていることが分かった
お風呂場やプール、海水浴など、耳に水が入ってしまうシチュエーションはいくつかあります。
そんな時、一番手っ取り早い方法は、頭を振って水を抜くことでしょう。
ところが今回、アメリカ・コーネル大学およびバージニア工科大学の研究により、耳の水を抜くために頭を振る方法は、脳に有害なダメージを与えるリスクがあることが判明しました。
特に、小さな子供にとっては、脳への悪影響が強いと言います。
重力の約10倍の負担⁈
研究チームは、ガラス管を材料に3Dプリントした外耳道を用いて、耳に入った水を出すのに必要な頭の振りの加速度(acceleration)を調査しました。
外耳道とは、耳の穴から鼓膜まで続く1本の通り道で、ここに水が詰まってしまいます。
実験の結果、水を抜くために必要な頭の振りの加速度は、子供の耳のサイズに対し、地球重力の約10倍かかることが判明しました。ちなみに、地球の重力は、空気抵抗を無視した場合、落下する物のスピードは毎秒9.81 m/sずつ加速していきます。
これを考慮すると、頭を振る力は、小さな子供の脳に十分なダメージを与えることが可能です。
研究主任のAnuj Baskota氏は、一方で、「大人の場合は、外耳道の直径幅が大きいおかげで、頭の振りに必要な力は小さくなり、脳への悪影響はほとんどない」と指摘します。
ただし、頭の振りの強さは、外耳道に詰まった水の全体量や位置によって大きく変わるので、大人でも注意は必要です。
また、一連の実験から、耳に水が詰まるのは液体の表面張力が大きな要因の一つであることも判明しています。表面張力とは、液体と気体の境界面で生じる力のことです。
例えば、水がひたひたに入ったコップの表面には、液体側と気体側から同時に分子の力が働いています。ところが、液体側の方が、気体よりはるかに密度が高いため、コップ表面は液体側に引きつけられる状態になります。
この力が耳の中でも起こっていて、水が抜けにくくなるようです。
しかし、この表面張力を逆に利用すれば、頭を降らなくても耳の水を抜くことができます。
Baskota氏は「アルコールや酢のように、水よりも表面張力の低い液体を数滴耳に入れることで、表面張力が減少して水は自然に流れ出てしまう」と指摘します。
他にも表面張力は温度が上がれば低くなるので、温水を耳に入れてみるのも効果的です。
誰でも一度は行ったことのある方法が危険とは、まさに寝耳に水なニュースですね。