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超巨大ブラックホールから「光速の99%の速度」でジェットが発射されていた

2020.01.12 Sunday

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Credit:NASA / Dana Berry / SkyWorks Digital
point
  • ブラックホールM87*のジェットが、光速の99%を超えていることを証明する観測に成功した
  • ジェットの速度がほぼ光速に近い限界速度という予想は以前からあったが、観測で示されたのは今回が初めて
  • これは異なる2点上で、全く同じ粒子が放つX線を見るという非常に高度な観測に成功したことを意味している
【編集注 2020. 01.14 10:00】
本記事の表現・内容について「誤りを多く含んでいる」とご指摘いただいたため、それに伴い大幅な修正を行いました。お詫びして訂正いたします。

おとめ座の方角にある超巨大楕円銀河M87の中心には、去年、人類史上初めて撮影に成功した有名な超大質量ブラックホールが存在しています。

このブラックホールには最近ハワイの神話にちなんで『Powehi(ポヴェヒ)』という非常に呼びづらい名前がつけられましたが、記事ではこれまで通り「M87*(えむ87すたー)」と表記します。

M87*を含め、銀河の中心核を成すような超大質量ブラックホールは、光速に近い速度で物質を放出する「ジェット」が起こります。

「ジェット」は未だに謎の多い現象ですが、新しい研究はその正確な速度観測に成功し、なんと光速度の99%を超えていることを確認したと報告しました。

ジェットの速度が光速の99%に近いという予想は以前からありましたが、観測によりそれが示されたのは初めてのことです。

この研究はハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)の研究チームにより、ハワイのホノルルで開催された米国天文学会(AAS)で発表され、天文学の学術雑誌『The Astrophysical Journal』へも掲載されます。現在論文はプレプリントサーバー『arXiv』で閲覧可能です。

Detection of Superluminal Motion in the X-Ray Jet of M87
https://arxiv.org/abs/1905.04330

M87銀河のブラックホールは巨大化したのか?

ブラックホールから、ジェットが5000光年に渡り伸びている。/Credit:NASA , The Hubble Heritage Team(STScI , AURA)

ジェットの勢いはブラックホールが巨大であるほど強い傾向にあります。

M87*は太陽質量の実に65億倍近くもあり、そこから放出されるジェットは、ハッブル宇宙望遠鏡によって5000光年に渡って伸びている様子が撮影されました。

しかし、どうしてM87銀河のブラックホールはここまで巨大化してしまったのでしょうか?

その理由は、M87銀河の多すぎる星団数に隠されていました。星団が銀河の周辺に生じる原因として最有力となるイベントは、銀河同士の衝突による星の拡散です。

銀河同士の衝突が起きると、大部分は時間をかけて融合していきますが、なかには周囲に飛び散るものもあり、ビッグインパクトによって月ができたように、銀河の周辺に独立した星団を形成します。

私たちの住む天の川銀河系では星団の数は200集団ほど確認されていますが、M87銀河の星団数は12000集団を数えます。

星団の数が多いということは、それだけ激しい銀河衝突を繰り返した可能性があり、銀河同士が衝突することで、中心部のブラックホールも融合して、巨大化したと考えられます。

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