リンを地球へ運び込んだのは?
現在彗星に関する調査がかなり進んでいて、地球に海をもたらしたのも彗星である可能性が示唆されています。
JAXAのハヤブサもこうした調査に貢献していますが、欧州宇宙機関 (ESA) の彗星探査機ロゼッタも彗星に関する貴重な情報をもたらしています。
探査機ロゼッタは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)という、太陽系を周回する彗星を調査しています。彗星は、太陽系形成当時の成分を保持したまま、宇宙を巡っています。
67Pは2つの彗星が結合した不思議な形状をしている特徴的な彗星ですが、ロゼッタに搭載された分析計ROSINAは、この彗星にリンの存在を示唆するデータをもたらしました。
しかし、ROSINAの主任研究者であるKathrin氏は、この時点ではどのようにして彗星がリンを獲得したかはわかりませんでした。
そんな中、Kathrin氏は先のALMA望遠鏡によって発見された星間雲の泡の壁で一酸化リンが生成されるという研究を会議で聞きます。そして自分たちの研究していた彗星の含むリンが、この一酸化リンからもたらされたというシナリオを考えたのです。
星間雲の泡は、太陽のような星の誕生とともに崩壊します。そのとき泡の壁に生成されていた豊富な一酸化リンは凍結し、星の周りにある氷や塵の中に閉じ込めえられます。これらの塵や氷は、惑星が誕生する前に、集まり合ってリンを含んだ彗星を形成していきます。
これが原初の太陽系に有機体であるリンを運びこんだのです。