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選択し、自分をコントロールする力が重要 / Credit:Canva
psychology

「選択し、自分をコントロールする」ことが制御不能な世界における”最大の力”

2025.08.06 11:30:06 Wednesday

私たちは、いつ何が生じるか分からない、「保証のない世界」で生きています。

気候変動、感染症の流行、経済不安、家族の病気や失業、次に何が起こるかを誰も予測できません。

そんな中で、自分で選択し、コントロールする力を十分に発揮させることは、混沌とした世界において心の安定を保つために欠かせない要素です。

この重要性を指摘するのは、米レバノン・バレー・カレッジのメンタルヘルスカウンセリングの専門家シンシア・ベジャー氏です。

この記事では、彼女の見解をもとに、「選択・コントロール」がどのように人生に影響するのかをひもときながら、日常の中でその力をうまく活かすための心理的テクニックを紹介します

In a Chaotic World, Your Greatest Power Is Self-Control https://www.psychologytoday.com/us/blog/meaningful-connections/202507/in-a-chaotic-world-your-greatest-power-is-self-control

制御不能な世界で「自分だけはコントロールできる」

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嵐の中、無意識にハンドルをぎゅっと握ってしまうもの / Credit:Canva

強い雨が降る中で運転しているとき、私たちは無意識のうちにハンドルをぎゅっと握りしめます。

もちろん、雨を止めることも、風の向きを変えることも、他の車を動かすこともできません。

それでも私たちは「何かしている」という感覚を得るために、コントロールしようとします。

この「握りしめる」という行動は、心理学的には安全や安心を得ようとする防衛本能です。

人は、世界に「予測不可能なこと」や「自分の意思では変えられないこと」が多すぎると、不安を抱きます。

その不安を和らげる手段として、少しでも自分が支配できる範囲を探して、そこにエネルギーを注ぐのです。

過去の研究もこの傾向を裏付けています。

1976年にエレン・ランガーとジュディス・ローディンが行った研究では、老人ホームの入居者に「どこに植物を置くか」「どの食事を選ぶか」といった小さな選択を与えるだけで、身体的健康や寿命に好影響が見られました。

また、1975年の別の研究では、何をやっても報われない状況に置かれた動物は、次第に行動を起こさなくなり、うつ状態に陥ることが明らかになりました。

これは人間にも当てはまり、「何もできない」「どうせ無理だ」と感じると、自尊心が損なわれていきます。

だからこそ、人は「少しでも自分が選べるもの」にすがります。

失恋をして心が乱れているときに、クローゼットを整理したり、SNSの写真を削除したりするのは、その象徴です。

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自分で決めてコントロールすることが、心身に安定をもたらす / Credit:Canva

「自分には、まだ決められることがある」

その感覚が、人を前に進ませる原動力になるのです。

一方で、こう自問することは重要です。

「自分は自分が立てた予定やルーティンにとらわれすぎていないだろうか」

「自分を守るためのコントロールが、知らぬ間に自分を縛ってはいないだろうか」

コントロールは両刃の剣です。

適切なコントロールは人生を前向きに進める力となりますが、度を越すと私たち自身を縛る「檻」になってしまいます。

ルールに固執しすぎたり、完璧を求めすぎたりすると、柔軟性を失い、他者とのつながりも損なわれます。

「自分を守るはずのコントロール」が、「自分を孤立させる檻」になるのです。

そのため、コントロールをすべて否定するのではなく、それとの付き合い方を理解し、扱い方に柔軟性を持つことが大切です。

では、どうすればコントロールを上手く活用できるでしょうか。

次ページ「自分をコントロールする力」を磨く4つのテクニック

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