- ミトコンドリアを捨てて呼吸を放棄した多細胞の寄生動物がみつかった
- その寄生動物は多細胞から単細胞に退化しつつある
かつて単細胞生物だった私たちの先祖は、酸素呼吸能力のある細菌を体内で飼うことで、自らも酸素呼吸の能力を得ました。
そのため、現在の地球上に存在する全ての多細胞生物には、飲み込まれた酸素呼吸細菌の子孫である「ミトコンドリア」が含まれていると考えられてきました。
しかし今回、ヘネグヤ・サルミニコラと呼ばれる寄生動物の細胞にはミトコンドリアがないことが判明。ミトコンドリアが存在しない多細胞生物が発見されたのは、世界で初めてです。
この寄生動物はどのような進化の過程を経てきたのでしょうか?
研究結果はイスラエルのテル・アビブ大学ダヤナ・ヤハロミ氏らによってまとめられ、2月24日に学術雑誌「PANS」に掲載されました。
https://www.pnas.org/content/early/2020/02/18/1909907117
寄生動物の生存戦略「捨てれるものは捨てる」を極めた結果
寄生動物は寄生に特化するために見た目が激変するだけでなく、感覚器官や運動器官、消化器官といった大事な器官も失ってしまうことが知られていました。
そのため、どんな生き物が元になって寄生動物へ進化したかは長年、生物学者の頭を悩ませてきました。
ヘネグヤ・サルミニコラはその中でも特に異質で、感覚器官も運動器官も消化器官もないだけでなく、神経系も存在しません。
過去に行われた遺伝解析によって、元の生物が複雑な器官を持つ動物であることがわかっています。
しかし各器官のパージを続けていった結果、ヘネグヤ・サルミニコラの細胞数は激減し、数えられる程度まで落ち込んでしまいました。
研究者たちは、ヘネグヤ・サルミニコラは寄生を極めるために、多細胞生物から単細胞生物へ逆進化している最中だと考えています。
共に研究を行ったテルアビブ大学のフション氏も「動物は常に複雑になるように進化するという常識の真逆が起きている」と述べています。