
- 他人の報酬と比べて満足度が変化するのは、サルも同じ
- 脳の一部である「視床下部外側野」の働きをを遮断すると、他者に左右されなくなる
自分の報酬に対する満足感は、他人の報酬によって変化するものです。
同僚たちよりもたくさん給料をもらっているなら自分の給料の額に満足するものですし、仕事への意欲は高まります。
逆に、同僚たちの中で一番給料が低いならどうでしょうか。不満が溜まり、仕事への意欲が低くなってしまうこともあるでしょう。
このように「他者のものが気になってしまう」のはなぜなのでしょうか?
自然科学研究機構生理学研究所の磯田昌岐教授らの研究グループは、脳の視床下部外側野が「他者の報酬情報」を考慮して主観的価値に変化を与えることを発見しました。
研究の詳細は2月24日「PNAS」誌に掲載されました。
Representation of distinct reward variables for self and other in primate lateral hypothalamus
https://www.pnas.org/content/early/2020/02/19/1917156117/tab-figures-data
価値を決めているのはどこ?

脳には「視床下部外側野」と呼ばれる、空腹時の食欲や食物の摂取などの本能行動を引き起こす部位があります。
これまでの研究で、視床下部外側野は「自分の身体に必要なものを入手する」役割を担い、「手に入れたものが、自分の必要を満たすかどうか」判断することがわかっています。
しかし、自分の報酬の価値は他人によって変わるものです。
果たしてこの部位は、「他人の評価」は行わないのでしょうか?
実は先行研究でも、視床下部外側野が「他者」を含む情報処理にも関与することが示唆されていましたが、具体的に他者のどのような情報を処理するかは分かっていませんでした。
今回の研究は、この点に注目し、視床下部外側野が主観的価値の変化にどのように影響しているか調査をしたものです。