セシウムは「秒」の定義に最適だった
数ある原子の中から選ばれたのは、セシウムです。
セシウムは自然界に同位体が存在しません。原子の同位体は性質が異なってしまうので、同位体の無いセシウムは、世界基準として適しています。
世界のどこのセシウムで測定しても、同じ結果が引き出されます。
また、セシウムの周波数は高いですが計測可能で、「秒」を表わすのに適していました。
こうした経緯により、セシウム原子時計による「秒」が定義されました。
「秒は、セシウム 133 の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631,770倍の継続時間である」
つまり、「1秒はセシウム周波が91億9263万1770万回振動した時間」と定義されたのです。
この原子時計は非常に正確なので、誤差はほとんどありません。3億年以上経っても1秒の誤差も生じないのです。
しかし、科学者たちにとっては、この原子時計でもまだ十分ではありません。
原子時計はコンピューターやGPSシステムに採用されていますが、より高度な処理能力や測位システムにするには、更に優れた時間管理が必要です。
2016年、ドイツの研究者は、ストロンチウム元素に基づいた、さらに優れた原子時計を提案しており、現在も制作が進められています。
「秒」は人が時間を管理するために生まれた時間定義です。
「昼と夜」から始まった定義であり、そこから生まれた「1秒」は、現在でも基準となる法則を変えて、私達の身近にあるんですね。